目的は「闇に紛れて飛ぶ」ほとんど“スパイ作戦専用”な軍用機があった! ただ、めちゃ遅い!

特殊作戦機として復活!

 こうした経緯から、イギリスで生まれたのがウェストランド「ライサンダー」です。初飛行は第2次世界大戦が始まる3年前の1936年6月15日、カナダでのライセンス生産含めトータルで1786機が生産されました。

 パイロットを含めた乗員は2~3名。固定式の頑丈な主脚に取り付けられた主輪にはフェアリング(整形覆い)が被せられており、ここに機関銃を装着したり、懸吊架を備えたスタブウィング(小翼)を取り付けたりして、小型爆弾や補給品投下用のコンテナなどを搭載することができました。

 実戦部隊への就役は1938年。第2次世界大戦の勃発1年前に運用が開始されましたが、いざ大戦が始まると、フランスに派遣された約170機の「ライサンダー」のうち約130機が失われてしまいます。敵ドイツ空軍の優勢な制空権下では、最大速度約340km/hの低速機が生き延びるのは難しかったからでした。

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イギリス空軍のウェストランド「ライサンダー」。左右の主脚にスタブウイング(小翼)が取り付けられているのがわかる(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館)。

 こうして、そのまま旧式化するかと思われた「ライサンダー」でしたが、イギリスが本土防衛に力を入れていた時期に、新たな活路が拓かれました。まだヘリコプターが試験の域を出ていなかった当時、同国のSOE(特殊作戦執行部)がフランスのレジスタンスとの連絡任務や諜報員の往来に目を付けたからです。低空を這うようにして低速飛行ができ、飛行場などない場所でもちょっとした広場(草原)であれば離着陸可能な本機こそ最適、と白羽の矢が立てられました。

 そこで機体全体をつや消しの黒で塗り、航続距離と滞空時間を延ばすためのドロップ・タンクを備え、負傷者の空輸にも対応できるよう担架も搭載可能にされた特殊作戦型が造られます。

【これが全身真っ黒な機体か?】スパイ機「ライサンダー」を前後左右から見る

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