乗客がバスを緊急停止させるシステム、日野自が世界初搭載 ドライバーの「急病」に対応

乗客による「誤操作」に対応する仕組みも

――乗客がみだりに押してしまうことはないのでしょうか?

 客席側のスイッチは座席の上方、荷物棚の下部にあり、簡単に押されないようにカバーもしてあります。そもそも、観光バスですので乗客はシートベルトを着用し座席から動かない想定です。そのなかで、ドライバーの様子を確認しやすい最前列だけにボタンを設置しています。

 運転席側のスイッチは、ドライバーあるいは乗務員の判断によるものなので、押されればシステムが作動しますが、客席側のスイッチが押された場合は3秒の猶予が設けられており、ドライバーが(自身に異常がないと)判断して作動をキャンセルすることもできます。

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運転席側の非常ブレーキスイッチ(画像:日野自動車)。
客席側の非常ブレーキスイッチ(画像:日野自動車)。
スイッチが押されると警報とともに赤ランプが点灯する(画像:日野自動車)。

――近いうちに、路線バス車両にもこのシステムが設けられるのでしょうか?

 路線バス用はすぐに商品化できる段階にはありません。というのは、車速や走行環境などの条件も異なるうえ、きつい制動が急にかかるので、立席も想定される路線バスには強すぎる恐れがあります。座席でシートベルトをした状況を想定した観光バス用のものを、そのまま応用できるわけではないのです。

※ ※ ※

 国土交通省によると、急な発作や疾患といったドライバーの異常に起因する事故は、年間200~300件発生しているとのこと。このため2011(平成23)年から、「ドライバー異常時対応システム」の検討を進め、「押しボタン方式」による異常検知と自動制御については2016年3月に、ドライバーの姿勢崩れやハンドル操作の有無などをシステムが監視する「自動検知方式」については2018年3月に、それぞれガイドラインを策定しています。

 日野自動車によると、今回開発したシステムは、押しボタンによる異常検知を受けて単純に減速・停止するだけで、ハンドル操作の補助機能などはないとのこと。国土交通省が策定したガイドラインでは、このような「単純停止方式」のほか、将来的な段階として、車線を維持しながら徐々に減速する「車線内停止方式」、可能な場合に自動で車線変更し、路肩などに寄せて停止する「路肩退避方式」も提示されているなど、自動運転技術の普及も見据えた内容になっています。

【了】

※一部修正しました(2018年6月22日22時20分)

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コメント

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4件のコメント

  1. ひとつ、
    >最前列座席の左右の情報にひとつづつ設けています。
    意味が分からなかったが、写真を見ると、
    >最前列座席の左右の[上方]にひとつづつ設けています。
    の間違いなのね。

    • ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。

  2. ん?顔認識、眠い表情や余所見を検知して警報を鳴らす装置もあるそうな?
    例えば道路で知人や仲間同士のすれ違いで脇見をしたただけでも鳴るそうな?
    この型式からATも設定されてるのでドライバーさんの負担軽減にも役立ってほしいですね

  3. 先日、大阪市住之江区のニュートラムに乗車。新型車両だったのですが、運転席の直ぐ脇で非常出口の中央部分に非常停止ボタンが付いていましたね。

    ニュートラムは無人運転の新型交通機関ですから、観光バスとは比較できないでしょうけれども、時節柄非常に興味深かったです。