西日本豪雨で貨物列車の迂回運転 なぜ時間がかかった? 過去の迂回輸送と違うコト

迂回貨物列車の増発は?

――ほかに貨物列車を走らせるために行ったことはありますか。

 通常は貨物列車が運転されていない路線で貨物列車を運転するため、運転士の養成やJR西日本とのダイヤの調整などを行いました。

――現在は1日1往復ですが、増発する考えはありますか。

 検討は続けますが、増発の準備が整う前に山陽本線が全線復旧(10月中の予定)するかもしれませんし、いまのところは何とも言えません。

※ ※ ※

 現在のJR線は、基本的には地域ごとに分かれたJR旅客会社が線路を保有し、各地域で旅客列車を運行。これに対してJR貨物は、各地のJR旅客会社から線路を借りて貨物列車を運行しています。ただし、すべてのJR線で貨物列車を運行できるわけではありません。貨物列車は旅客列車に比べて重いためです。

 貨物列車を走らせるには、重い車両が走っても事故やトラブルが発生しないよう、線路を強化しなければなりません。旅客列車専用の路線は貨物列車の重さに耐えられる構造になっていない場合がありますし、かつて貨物列車が走っていた路線も、貨物列車の運行終了後に旅客列車しか走れない構造で造り直されたケースがあります。このためJR貨物も、基本的には貨物列車を毎日のように走らせている区間や、臨時の貨物列車を運転することがある区間などに限り、貨物列車の運行許可を国から受けています。

 今回の迂回ルートのうち、伯備線は貨物列車が毎日運行されています。山陰本線と山口線は2015年までに貨物列車の運行がすべて終了。JR貨物は貨物列車を走らせるための許可も国に返上していました。このため、今回の貨物列車の運転では改めて国から許可を受ける必要がありました。

 ちなみに、磐越西線は定期運行の貨物列車が運転されていませせんが、貨物列車の運行許可は国に返上していません。このため、新潟県中越地震の迂回貨物列車は改めて許可を受ける必要がなかったのです。2011(平成23)年の東日本大震災でも、地震発生から2週間後には南東北エリアに石油を運ぶための臨時貨物列車が運行されています。

【了】

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コメント

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6件のコメント

  1. と言うことは新しい餘部鉄橋は貨物列車NGだったのかな
    京都から山陰に入った方が経路的には短そうだったんで疑問だった

    • 列車荷重EA17設計なので、
      貨物列車も余裕のはずですよ。

      たぶん貨物駅や運転区の兼合いで、
      このような経路になったのだろうと推測。

  2. 万が一の事が在るからそのまま、今回の貨物免許はそのまま返納せずに維持した方が(大規模災害はいつ起きるのか分からないご時世なので)

  3. 京都から山陰線経由だと、伯耆大山まで貨物駅はありませんが、伯備線経由だと、京都貨物駅・吹田貨物ターミナル駅・神戸貨物ターミナル駅・姫路貨物ターミナル駅・岡山貨物ターミナル駅にも停車できます。

    かつ、現在山科駅側から山陰線に直接入る線路はありませんし、京都貨物駅から山陰線に入る短絡線もありません。京都駅から入るには向日町駅付近→京都駅と2回スイッチバックしなければいけません。

  4. 迂回貨物増発したくてもJR貨物所有のDD51ディーゼル機関車が足りないとか。もしくはDD51があってもそれを運転できる免許をもった乗務員が居ないとか。線路保有者のJR西日本が貨物の運行が無くなった区間の単線の山陰本線や山口線は信号やポイント保守経費削減のため行き違いのできる駅が減って貨物のスジが通らないとか。いろいろありそう。

  5. 磐越西線の貨物の免許は、かなり前に貨物輸送を廃止したから無かったと思うよ。
    国がJR貨物とJR東日本に石油輸送を要請し、1週間でJR東日本が確認作業を終了させたから。
    また、磐越西線の東日本の運転手に、国鉄時代DD51で運転した経験者が10人程度いたので、
    地形が不慣れな貨物の運転手の横に、東日本の運転手が乗ってサポートしたという話。
    今なら、国鉄からの人は退職したから無理。