【「平成」と乗りもの】規制だらけ、競争ナシだった日本の空にLCCが羽ばたくまで 次なる課題も

日本LCCに待ち受ける厳しい現実 鍵は「羽田」に

 日本のLCCは中国系の春秋航空日本、マレーシアのエアアジア本体が再進出した第二期エアアジア・ジャパンも参戦し、黎明期から成長期に入り、旅客シェアも10%を超えるに至りました。しかし、LCCで50%のシェアを占めようとするアジア全体の航空市場を見ると、まだまだその存在感は薄いといわざるを得ません。経営面でも確固とした黒字体質を築いたのはピーチのみであり、「80%の席が埋まって初めて収支が償う」ビジネスモデルには厳しい将来が待ち受けます。

 その根源は、日本の旅客需要の7割を占める「羽田=首都圏市場にLCCが参入できない」ことにあります。それ以外の日本の航空市場でLCCが果たす役割は飽和状態に近づきつつある一方、2020年に実施される羽田空港の発着枠の増加は、ほとんどが国際線の拡大に充てられ、国内線に新規参入の余地はありません。これで日本LCCの将来があるといえるのでしょうか。

 いまやJAL、ANAの経常利益は1500億円を超え、平成初期の規制下と比べると2ケタ増しの数字です。両社の経営努力は尊重するものの、これを達成できている要因は緻密な収入管理と、それを支える座席供給コントロールにあると考えられます。閑散期の機材を小型化し、「いつでも座席が取れにくい」状態を作り出すことで運賃レベルを高く保つことができているからこそ、損益分岐点を低く保て、利用率がそれを超えれば急速に利益額が高まるという、固定費が高い航空事業の典型的な成功事例を作り出しているのです。しかしその利益は「高い運賃を払わざるを得ない消費者・利用者」によって支えられており、その源泉が「羽田空港にLCCを入れない」という市場そのものの支配といえます。

「現実に羽田の発着枠がないから、それはやむを得ない」とされますが、筆者(武藤康史:航空ビジネスアドバイザー)は違う考えを持っています。羽田に発着枠がないのは「管制能力が十分に発揮されていない」からであり、管制官組合の「安全を旗印とした発着数の抑制にある」からだと思うのです。それは羽田と同規模の欧米における主要空港の発着数と比較しても歴然です。

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バニラ・エアは2019年度末をめどにピーチと経営統合する予定(画像:photolibrary)。

 筆者は、その解決策は「羽田空港の管制民営化」にあると考えます。管制に詳しい国交省OBに聞いても「優秀な管制官とテクノロジーを羽田に結集し、あらゆる手段を講じて高密度管制を実現すれば、いまのままでも30%以上の発着数増は可能」といわれます。それを実現するには、羽田の管制を公務員から民間経営に移行する(高スキルを持つ管制官を羽田に集中配置し高額給与でインセンティブを与える仕組みを作る)ことが最良だと考えます。この原資は、発着枠が増えて空港使用料やPSFC(旅客施設使用料)の増収が得られる国および空港運営会社から、地元対策費や、ネガティブな影響が懸念される成田空港へのエアライン誘致対策に要する資金も含めて回収すれば、十分に賄うことができます。

 国交省が特に忌み嫌う話題ではありますが、2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」以降、LCCを含む新興キャリアの事業拡大を支え、真の長期的発展につなげられるのは、羽田を軸とする首都圏以外になく、世論・行政の「タブーなき議論」がいまこそ求められていると、筆者は強く考えます。

【了】

【路線図】日本のLCC各社の就航地 アジア各地へも

Writer: 武藤康史(航空ビジネスアドバイザー)

航空ビジネスアドバイザー。大手エアラインから独立してスターフライヤーを創業。30年以上の航空会社経験をもとに、国内外で航空関係のビジネス創造を手がける。「航空業界を経営目線で理解してもらうべく、航空ビジネスのコメンテーターとしても活躍中。

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コメント

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7件のコメント

  1. >優秀な管制官とテクノロジーを羽田に結集し
    なにこの作文。羽田の管制官は無能と言うためだけの作文なの?羽田の管制官に失礼だろ。撤回しろ。

    • 何と言うか~手の施しようのない・・・

    • 「羽田の管制官は無能」なんて言ってないでしょ
      テストで成績の良い子供を集めて進学クラスをつくろうと言ってるだけで「他の子供の出来が悪い」なんて話はしてない
      そういう曲解してムキになる連中が騒ぐから全体の管制能力が向上しないとよくわかるコメント
      どの業界も視野の狭い組合が発展を阻害している

    • だから不作は出荷できないから濾すんでしょ?

  2. 如何に優秀な管制官を集めると言えど、所詮は人海戦術であり、限界がある。
    この航空ビジネスナンとやらさんは、如何なる余裕さえも認めないという方針のようだが、民営化したところで人海戦術以上のことは出来ないんじゃないか。
    人命に関わることなのだ。
    シュミレーターゲームと同一視してやいないだろうか?

  3. "羽田の管制官は無能"とか"如何なる余裕さえも認めない"とか、曲解して反対する人の多いこと
    この手の人は生まれた時代が違えば飛行機なんて危ないと民間航路自体に反対していたと思う

  4. 「羽田空港に国際線はともかく国内線LCC」ってチャンチャラおかしいわ。LCCなんて空港利用料金ケチるためにその都市圏第2,第3の空港を使い、詰め詰めにしてそれこそターンアラウンド4,50分圏内で着陸して離陸していくんだからこそ安価な運賃実現できてるんだけどな。例えばJetBlueは確かにニューヨークではジョン・F・ケネディ使ってるけど、太平洋側はロングビーチだしな。
    国内線で羽田を拠点にしてLCCやったら北九州とか神戸線になってそれこそJALANAともかくスタフラやスカイマーク潰しにしかならんし、JALANA本体やスタフラ、AirDo、ソラシド、FDA、JTAなんかですら儲かりそうにない路線をJALならJetstar Japan、ANAならPeachで置き換えるだけですがな……。