旅客と貨物が一緒に移動「貨客混載」新幹線にも拡大か そのメリットと課題は

新幹線で運ぶのに大きなメリットがある

 JR九州は2019年3月、同社グループの中期経営計画に「新幹線を活用した物流事業の検討」を盛り込みました。東北・上越新幹線で始まった今回の実証実験も、貨客混載のテストといえるもの。JR東日本の子会社でベンチャー企業への投資などを行っているJR東日本スタートアップと、水産物の卸・小売会社のフーディソンが共同で企画しました。

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現在の貨客混載輸送はローカル線が中心で輸送距離も短い。写真は北越急行ほくほく線の旅客列車で行われている宅配便荷物の貨客混載輸送(2017年4月、草町義和撮影)。

 日本の鉄道では、明治時代から魚介類を運ぶ貨物列車が運転され、魚介類専用の貨車(冷蔵車など)も登場。戦後の1960年代には高速運転に対応した冷蔵車が開発され、九州~東京間などで魚介類専用の特急貨物列車が運転されました。しかし、トラック輸送の発達などで鉄道貨物輸送が衰退し、国鉄(現在のJR)では1986(昭和61)年までに冷蔵車や魚介類専用の貨物列車が消滅。いまは鉄道で魚介類を運ぶ場合、冷蔵コンテナや冷凍コンテナを使っています。

 JR東日本スタートアップの柴田 裕社長は、実証実験後の記者会見で「新幹線のメリットは(トラックや在来線の貨物列車に比べて)ムチャクチャ速いこと」と話し、時間の経過で鮮度が落ちる魚介類を運ぶときなどに、大きな効果があるという認識を示しました。同社マネージャーの阿久津智紀さんも「今回の実証実験の場合、水揚げから店頭に並ぶまで6~7時間かかりましたが、トラックなら2日以上になると思います」と話しました。

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品川駅構内の店頭に並んだウニと甘エビ。甘エビは上越新幹線「とき」で運ばれた。

 ただ、旅客列車のスペースの一部を使うことになるため、一度に運べる量には限りがあります。昔のように魚介類専用の車両を導入することも考えられますが、それではコストが高くなるという問題が。柴田社長は「新幹線では多数の旅客列車が運転されています。もし輸送力を強化するとしたら(専用の車両を導入するのではなく)魚介類輸送に対応した旅客列車を増やす方向が考えられると思います」と話しました。

 JR東日本スタートアップによると、この実証実験は2019年6月21日(金)までの計6日間、行われる予定です。

【了】

【写真】将来は魚も360km/hで運ぶ? 次世代新幹線「ALFA-X」

Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)

鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。

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コメント

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6件のコメント

  1. ムチャクチャ速いんだ

  2. そういえば東海道新幹線でも貨物を運ぶ話もありました。結局運行はされず、大阪に残っていた使われずに残っていた設備とかもなくなりましたが。
    折りたたみできる座席を開発して荷物も置けるスペースを作れるようにしました、て記事が将来ここに載るかもしれませんね。

  3. Kgあたり輸送料いくらよ
    当然だけどフォークリフトでまとめて載せるなんてできない
    1tトラック1台分の荷物を載せて降ろすのに掛かる時間と人員は?
    デメリットに全く触れてないのに運転手不足を解消とはお笑いだ

    • 悲しい現実ですね。
      要が抜けてる茶番にすぎません
      これが物流を見る世間の視線なんですよ。
      見えないのではなくて見ようとしないし診ようともしない
      旅客、物流輸送は確実に破綻してしまいます。

  4. なぜ、JR東日本の新幹線で荷物運ぶ記事なのに、新幹線レールゴー・サービスの言及がないんだろう?

  5. 鮮度がすぐ落ちる生鮮は産地行って食べろよ。
    それが地域活性につながるだろ?
    JRはそこまで線路ひいてやれよ。

    それがJRの仕事だよ。