タンカー攻撃事件が自衛隊出動に至らぬ理由 なぜ「日本に対する攻撃」にならないのか

海には海のルールあり、「旗国主義」とは?

 地球の大部分を構成する海には、いかなる国の主権も及ばず、また世界中の国が自由に利用できる部分が存在します。これを「公海」といいます。

 しかし、いかなる国も公海に主権を及ぼすことができないということになれば、そこを航行する船舶が自由に活動することと引き換えに、公海が無秩序な状態におちいる可能性も否定できません。そこで、公海上の「船舶」に対してその船の「旗国(登録国)」が管理や支配をおよぼすことにより、公海秩序を維持しようという考えが確立していきました。これを「旗国主義」といいます。

 これに基づけば、たとえば日本を旗国とする船で何らかの事件が発生した場合、そこには日本の法律が適用され、それによってその犯罪が裁かれることになります。実際に、日本の刑法第1条2項には「日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項(この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する)と同様とする」と規定されています。

 今回の事例では、攻撃を受けた「コクカ・カレイジャス」号はパナマ船籍なので、つまり、この攻撃は日本に対するものではなく、パナマに対するものとみなされることになります。

「自衛権行使の必要性なし」 防衛大臣発言の理由とは

 ところで、今回の事案をめぐって6月14日(木)に岩屋防衛大臣は会見し、そこで「今回の事案は自衛権行使の3要件に合致せず、自衛隊の派遣は見送る」という趣旨の発言をしました。

 しかし、そもそも、民間船舶への攻撃に対して自衛権を行使する余地はあるのかという点、そして、なぜ今回の事例は自衛権行使の要件に当てはまらないのかという点について、疑問を持つ人がいるかもしれません。

 まず、国際法上、民間船舶に対する攻撃であっても、その攻撃者が明確になっていて、かつその船を狙って攻撃したことが明らかである場合には、これを当該船舶の旗国に対する「武力攻撃(自衛権を行使するための要件となる、最も重大な形態の武力行使)」と認めることは可能とされています。つまり、もし民間船舶に対する攻撃が武力攻撃と認められるような場合には、当該船舶の旗国は個別的自衛権の行使によってこれに対処することができるわけです。

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コメント

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5件のコメント

  1. 軍事ニュースいらねーよ

  2. ハムレット曰く「天と地の間にはお前の哲学などには思いもよらぬ出来事があるのだ」と。右だか左だか、愛国だか反日だか、まあそういうことだ。

  3. はい!これが現実ですね、自分等が痛い戦だけ反対してりゃ消せる火も消せまいよ

  4. まず艦尾に攻撃を受け、、、

    その後さらに艦中央部付近にも攻撃を受け、、、

    この船は「艦」では無いと思います。

  5. されませんって・・・
    日本に対する攻撃の意図がなくても誰かが市んじゃっても許してねで済ませるんですかそうですか