「正しく恐れろ」見えない敵と戦う陸自化学科 新型コロナ禍に注目したいその姿勢

見えない敵への恐怖どう立ち向かう? 陸自化学科の「教え」

 このような装備品を保有しているとはいえ、放射性物質や生物、化学兵器のような目に見えない敵を相手にするのは、目に見える敵を相手にするより恐ろしく、化学科の隊員はみな恐怖に対する強い自制心を持っているのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思っていました。

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東日本大震災における原子力災害派遣活動にて、立入制限区域活動部隊の離脱支援にあたる中央特殊武器防護隊(画像:陸上自衛隊)。

 筆者は以前、大宮駐屯地に所在する、化学科隊員を教育する「陸上自衛隊化学学校」を取材したことがあります。その際に話を聞いた同校副校長の1等陸佐(当時)は、化学科の隊員はほかの職種の隊員に比べて「飛びぬけて恐怖に対する強い自制心を備えているわけではない」とした上で、目に見えないものは怖いと思うのは当然なので、対象がどれだけ怖いのかをきちんと理解して「正しく恐れること」と、防護マスクや防護衣を正しく着用していれば生命に危険はないことを隊員に徹底し、正しい対処法を教えることが、化学学校の役割であると語りました。

 2020年5月上旬現在、日本を含めた世界は、新型コロナウイルスの脅威に包まれています。このような状況下では情報量が急増し、その情報に流されて不安になりがちですが、化学学校の隊員教育で徹底されている「正しく恐れる」という姿勢は、われわれがこの状況下で自分自身を失わず、生き抜いていく上で、大いに参考にすべきなのではないかと、筆者は思います。

【了】

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Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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