古代神殿かよ!? 船に巨大な柱=“帆”がどんどん取り付けられるワケ 邪魔じゃないの…?

日本郵船は“もうちょっと短いの”を導入

 商船三井は2023年4月に発表した「商船三井グループ環境ビジョン2.2」で、2035年までにウインドチャレンジャー搭載船を80隻導入する計画を明記しており、日本製の次世代帆船が続々と登場する見通しです。

 ウィンドチャレンジャーに似たような形のものとしては、英BARテクノロジーズの硬翼帆「Wind Wings(ウインド・ウイングス)」があります。こちらは既存船への搭載を進めており、2023年10月には21万重量トン型(ニューカッスルマックスバルカー)の「Berge Olympus」に、高さ37.5m、幅20mのウインド・ウイングスが4本取り付けられ商業運航を始めています。

 一方で別のタイプの硬翼帆を導入しようという動きもあり、その一つが前出のONEが導入した「ヴェントフォイル」です。

 日本郵船グループは2023年7月にヴェントフォイルの導入を発表しており、それによれば全長20フィートのフラットラック(側壁と屋根がないコンテナ)を土台として、船上に約16mの翼を立ち上げ、帆の役割を果たすとしています。翼に開けられた吸い込み口から風を取り込み、気圧差を増幅させてより強い推進力を得られる点が特徴で、同種の装置としては小型なため荷役の邪魔になりにくく、搭載や移設が容易とされています。

 丸紅が業務提携契約を結んだスペインの「バウンド・フォー・ブルー(b4b)」もサクションセイル「eSAIL」を開発しています。b4bは穀物大手の仏ルイ・ドレフュスが用船するジュース船「Atlantic Orchard」に4本のeSAILを搭載する契約を結んだと2023年12月に発表しました。

世界の潮流は「柱」タイプ

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エアバスが導入するローターセイル搭載のRORO船(画像:エアバス)。

 ただ世界的に見ると、設置が容易な円筒型の「ローターセール」が増えてきているようです。

 英アネモイ・マリン・テクノロジーズはブラジルの資源大手が運航する世界最大となる40万重量トン型超大型鉱石船(VLOC)「Sohar Max」に、フィンランドのノルスパワーはドイツの大手船社オルデンドルフ・キャリアーズのポストパナマックスバルカー「Dietrich Oldendorf」にローターセールを搭載することで合意。さらにノルスパワーは仏船主ルイ・ドレフュス・アルマトゥールズとの間で、エアバス向けにチャーターされるメタノール燃料RORO船3隻にローターセールを搭載する契約を結んでいます。

 商船三井は6万2900重量トン型バルカーにもウインドチャレンジャーを搭載することを決めていますが、同船にはアネモイ製のローターセールも取り付けられます。このように複数の風力推進装置を設置する計画もあり、海運の脱炭素に向けた取り組みはまだ試行錯誤が続きそうです。

【了】

【ド迫力!】実は“倒れる”巨大柱 古代神殿みたいになる貨物船(画像)

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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