ホームから駅の外まで5分 トンネル内のトキ鉄「筒石駅」で下車、開業以来の変化が

利用者が少なくても駅員がいた理由

 筒石駅は100年以上前の1912(大正元)年12月16日、国鉄の信越線支線(のちの北陸本線の一部)の駅として開業。のちにJR西日本の駅になりました。その後、北陸新幹線に並行する在来線をJRから分離することが決定。2015年に北陸新幹線の長野~金沢間が延伸開業したのにあわせ、筒石駅を含む北陸本線の新潟県内区間が、第三セクターのトキ鉄に移管されました。

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筒石駅に停車するようになった観光列車「雪月花」(画像:えちごトキめき鉄道)。

 開業当時、筒石駅は現在地から約700m離れた集落の近くにありました。しかし、海沿いの断崖にへばりつくようにして駅が整備されたため、幾度となく地滑りの被害に遭っています。そこで国鉄は、北陸本線の電化と複線化にあわせ、内陸寄りを長いトンネルで通り抜けるルートに変更することにしました。

 このため、筒石駅は新ルートに移設せずに廃止される計画でしたが、これに住民が反発。トンネル内に駅を設置することになったのです(2012年8月14日付け新潟日報)。こうして筒石駅は1969(昭和44)年9月29日、現在地に移転。地上駅舎と地下ホームの高低差は40mあり、合計290段の階段(上り線ホームからは280段)で結ばれました。

 過疎化が進む地域の駅ということもあって筒石駅の利用者は非常に少なく、2005(平成17)年度の1日平均乗車人員で46人。それでも国鉄時代から駅員が常駐しました。暗いトンネル内に幅の狭いホームを設けているため、無人駅では安全の確保が難しかったためです。

 しかし、利用者の減少はさらに進み、2017年度には1日平均乗車人員は12年前の半分(23人)に。監視カメラを設置するなどの安全対策が進んだこともあり、ついに無人駅に変更されたのです。

 その一方、珍しい「トンネル駅」をひと目見ようと、全国各地から大勢の鉄道ファンや観光客が筒石駅を訪れるようになりました。トキ鉄は2018年3月から、同社の観光列車「えちごトキめきリゾート雪月花」を筒石駅に停車させて見学時間を確保。駅自体を「観光地」のひとつとして活用しています。

【了】

【地図】地下40m! 筒石駅はここにある

Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)

鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。

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