「緊急徐行マニュアル30」新幹線に異常発生 そのとき運転士は 指令・車掌との交信記録

新幹線で、走行中に異常発生。そのとき運転士、車掌、指令員は、どのようにしてその危機に立ち向かっていくのでしょうか。「架線に飛来物」「列車火災」にあたって、異常時訓練シミュレータを使い行われたやりとりをお伝えします。

この記事の目次

・激甚化する災害・社会情勢を受け誕生した新型シミュレータ
・状況1「沿線からの飛来物」
・状況2「列車火災」
・東京・名古屋・大阪と三島に

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激甚化する災害・社会情勢を受け誕生した新型シミュレータ

 JR東海が2020年11月13日(金)、この9月から実際に使っている新型の「東海道新幹線 異常時訓練シミュレータ」について報道公開を実施しました。

 東海道新幹線の安全確保のためJR東海は、新幹線運転士に対して、教材を用いた知識面の教育を行うとともに、実際の車両やシミュレータを用いた実践的な訓練を実施しているとのこと。

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JR東海が新たに導入した「対話形式訓練シミュレータ」(2020年11月13日、恵 知仁撮影)。

 そして、これまで使用していた訓練用シミュレータは主に車両故障へ対応するものだったのに対し、新型は激甚化する自然災害や、社会情勢などを受け、自然災害や列車火災などの異常事態を再現できるのがポイント。地震で停電になることを想定した訓練など、65項目があるそうです。

 シミュレータは、講師が指令員役、車掌役になって、マンツーマンの対話形式で行う「対話形式訓練シミュレータ」と、1人で行う「自習形式訓練シミュレータ」の2タイプがあり、それぞれ、講師が運転士の技量に合わせて異常事態を発生させられる、運転士自身が訓練メニューを選択して苦手項目や弱点を克服することが可能、といった特徴があります。

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JR東海が新たに導入した「自習形式訓練シミュレータ」(2020年11月13日、恵 知仁撮影)。

 この記事では、「対話形式訓練シミュレータ」を使った訓練の様子、やりとりを詳細にお伝えします。東海道新幹線での異常発生時、どういったやりとりが運転士と指令、車掌のあいだで行われるのでしょうか。

 なお、復唱など一部のやりとりは省略しています。

状況1「沿線からの飛来物」

【指令員役(講師)】
米原~京都間、下り線を走行中、強風のため120km/hの徐行運転を行っています。信号の現示に従って走行してください。車掌への連絡は省略とします。では、はじめます。

※訓練開始。走行中の状態になる。

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米原~京都間の下り線を、120km/hの徐行運転で走行(2020年11月13日、恵 知仁撮影)。

【運転士】
信号120(ひゃくふたじゅう)。

※「プー」という呼び出し音。

個別呼び出し、点。
はい、227A(ふたひゃくふたじゅうななえー)です。

【指令員(講師)】
227A、緊急徐行マニュアル30、緊急徐行マニュアル30。

※運転士がブレーキハンドルを操作する音。

【運転士】
緊急徐行マニュアル30。
ブレーキハンドル、非常位置です。

【指令員(講師)】
それでは指令伝達を行います。マニュアル30の指令伝達です。現時点から、448kmちょうどまでマニュアル30。理由は現地確認のため。指令番号は401号。指令時刻は13時38分。輸送指令ナガイです。復唱どうぞ。

※運転士が復唱。

なお、対向列車から448km付近の架線(がせん)に飛来物があるとの申告がありました。現地確認をお願いします。

【運転士】
確認後、報告します。
名古屋運転士フジヤマでした。

※通話終了。

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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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