フェリーさんふらわあ なぜ志布志市志布志町志布志発着か…って何そこ? 現地へ〈PR〉

大阪南港発のフェリーさんふらわあ。行先のひとつである鹿児島県の「志布志市志布志町志布志」はどんなところか、実際に行ってみたところ、フェリーが鹿児島市でなく志布志発着なことに、納得の理由がありました。あと「志」推しでした。

大阪~鹿児島航路のフェリーさんふらわあ 鹿児島の発着地は「志志志志志志」

 大阪南港に、2航路が発着するフェリーさんふらわあ。その行先のひとつは別府、もうひとつは「志布志市志布志町志布志」です。どんなところなのか、フェリーに乗って行ってみました。

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志布志市役所志布志支所にある看板(2020年2月、中島洋平撮影)。

 志布志は鹿児島県の大隅半島に位置する、太平洋へ面した港町。大阪南港を17時55分に出港して船中1泊、朝8時55分に到着します(所要時間、運航時刻は日によって異なる)。

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志布志港に到着した「さんふらわあ きりしま」(2020年2月、中島洋平撮影)。

 ターミナルにあった記念撮影用の顔出し看板には、「鹿児島県志布志市志布志町志布志3292」との住所表記。市のキャラクター「志武士ししまる」が、「志(こころざし)あふれるまち 志布志」と紹介するなど、この街、「志」の字が推されています。

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フェリーターミナルにあった顔出し看板(2020年2月、中島洋平撮影)。

 その象徴的な場所が市役所。「こちらは、志布志市志布志町志布志の志布志市役所志布志支所です」と書かれた看板が立っています。JR志布志駅にある観光協会で「市役所へ行きたい」と言うと、即座に「看板ですか?」と返ってくるほど、観光スポットにもなっているようです。

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市役所にはこんな看板も(2020年2月、中島洋平撮影)。

 この市役所はもともと、「曽於(そお)郡志布志町の志布志町役場」でしたが、2006(平成18)年に周辺自治体との合併で「志布志市」が誕生。住所に旧町名もつけることになり、「志布志市志布志町志布志」と「志」の字だらけになりました。なお、志布志市役所の本庁舎は、旧志布志町の西隣の町だった旧有明町役場です。

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JR志布志駅(2020年2月、中島洋平撮影)。
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駅のトイレにかかるのれんも「男志」「女志」と「志」の字推し(2020年2月、中島洋平撮影)。

 上から読んでも、下から読んでも「志布志」。このことが実は、地名の由来にもなっているそうです。街なかの観光案内看板では、次のように説明されていました。

「志布志の地名は、天智天皇遷幸の伝説のなかで、天皇に布を献上した妻女の優しい心にならい、召使いの女性もまた布を献上したところ、天皇は上下その志の厚いのを喜ばれて『この地は志布志である』といわれた」

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志布志中心部の街並み(2020年2月、中島洋平撮影)。

 こうして、上から読んでも下から読んでも「志の布」となる地名が誕生したと、いう説があります。

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志布志中心部にある大慈寺。廃仏毀釈の影響が大きかった鹿児島のなかで、数少ない禅寺のひとつ(2020年2月、中島洋平撮影)。

大阪~鹿児島間のフェリー なぜ鹿児島市でなく志布志市発着なのか そのメリットとは?

 志布志市は人口3万人ほどと、鹿児島県内でもそれほど大きな街ではありません。なぜフェリーさんふらわあの大阪~鹿児島航路は、県の中心である鹿児島市ではなく、志布志市発着なのでしょうか。

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志布志周辺と鹿児島県の地図。旧大隅線、旧志布志線に沿ってバスも運行されている(国土地理院の地図を加工)。

 それは、かんたんに言えば「鹿児島市だと時間がかかりすぎる」からです。錦江湾の奥に位置する鹿児島市までは、志布志市から大隅半島南端の佐多岬まで回り込み、そこから北上しなければならず、距離にして少なくとも150km以上はあります。そのため志布志市から先は、もしくは志布志市までは、陸路で移動したほうが効率がよいのです。

 また、太平洋に面した志布志市は宮崎県にも近く、日本有数の農畜産王国である南九州一帯から利用しやすい、という地の利もあります。

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志布志港と鹿児島市内を結ぶ高速シャトルバス「さんふらわあライナー」。「さんふらわあ」乗船客は無料で利用可能(2020年2月、中島洋平撮影)。

 志布志のフェリーターミナルには、鹿児島市内とを約2時間で結ぶ高速シャトルバス「さんふらわあライナー」がフェリーの発着にあわせて運行(乗船客は無料)されているほか、志布志市内からは西側の鹿屋市、垂水市方面、北側の宮崎県都城市方面、鹿児島空港のある鹿児島県霧島市方面にもバスが発着。鉄道も日南線が、JR志布志駅から宮崎県の串間市、日南市、宮崎市方面へ通じています。またこうしてバスが各地へ向かっているように、クルマを使った南九州の周遊にも、志布志は便利な場所です。大阪からフェリーで自家用車を載せてくることもできますし、志布志港でレンタカーを借りることも可能です。

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志布志駅に到着した鹿児島交通の垂水行き路線バス(2020年2月、中島洋平撮影)。

 志布志市のある大隅半島から錦江湾を挟んだ対岸の薩摩半島へは、桜島と鹿児島市街のあいだに「桜島フェリー」、垂水市と鹿児島市のあいだに「鴨池・垂水フェリー」、南大隅町根占(ねじめ)港と指宿(いぶすき)市の山川港のあいだに「フェリーなんきゅう」と、3つの航路が存在し、それぞれクルマも載せられます(フェリーなんきゅうの一部は指宿港発着。ただし車両航送不可)。志布志を起点とした南九州・鹿児島の旅では、これら航路も活用可能です。

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旧志布志機関区の跡地、志布志鉄道記念公園で保存されているキハ52形ディーゼルカー(2020年2月、中島洋平撮影)。

 ちなみに、現在のJR日南線は志布志が終点ですが、かつてはそこから北の都城方面と、西の鹿屋・垂水方面の双方へ鉄道が通じていました。それぞれ志布志線、大隅線といい、JR発足直後の1987(昭和62)年に廃止されています。志布志駅は、3方向への鉄道路線が集まるターミナルだったのです。

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志布志鉄道記念公園で保存されているC58形蒸気機関車(2020年2月、中島洋平撮影)。

 それから30年以上を経て、志布志にはまもなく高速道路が開通します。九州道の加治木JCT(鹿児島県姶良市)から鹿屋方面へ伸びる東九州道が、鹿屋串良JCTから志布志ICまで、2020年度内に延伸する見込み。交通の便がよりよくなります。

志布志から鹿児島市まで、バス&船で行ってみた!

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志布志から鹿屋へ向かうバスの車窓から、大隅線の廃線跡を活用した道路に架かる橋。欄干には汽車の絵が(2020年2月、中島洋平撮影)。
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大隅線の鹿屋駅跡に設けられた鹿屋市鉄道記念館(2020年2月、中島洋平撮影)。
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大隅線にまつわる資料を多数展示している(2020年2月、中島洋平撮影)。
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鹿屋市内にあった大隅線各駅の駅名標も集められている(2020年2月、中島洋平撮影)。
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鹿屋からバスで垂水方面へ。高台から一気に海沿いへ下りていく(2020年2月、中島洋平撮影)。
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垂水港の近くには、旧大隅線のトンネルが残る(2020年2月、中島洋平撮影)。
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大隅半島と鹿児島市内を結ぶ鴨池・垂水フェリー(2020年2月、中島洋平撮影)。
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垂水港に停まる「鹿児島鹿屋直行バス」。日本で唯一、客を乗せたままフェリーに載る一般路線バス。鹿屋から鹿児島市内へ直行する(2020年2月、中島洋平撮影)。
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鴨池・垂水フェリーの車両甲板。「鹿児島鹿屋直行バス」の乗客はフェリー乗船中、原則としてバスから降りて船の客室内で過ごす(2020年2月、中島洋平撮影)。
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鴨池・垂水フェリーはうどんが名物(2020年2月、中島洋平撮影)。
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鴨池・垂水フェリーから望む桜島(2020年2月、中島洋平撮影)。
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鹿児島市の鴨池港でフェリーから降りる「鹿児島鹿屋直行バス」(2020年2月、中島洋平撮影)。
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鹿児島市電。京急ラッピング車両と「さんふらわあ」ラッピング車両がすれ違う(2020年2月、中島洋平撮影)。

●「フェリーさんふらわあ」ウェブサイト
https://www.ferry-sunflower.co.jp/

【了】

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