災害救助犬にクルマができること ホンダアクセス「S.A.R. Dog Concept」とは〈PR〉

ホンダアクセスが「災害救助犬のためのクルマ」をうたうコンセプトカーを発表しました。そもそも「災害救助犬」とはどのような犬なのでしょうか。警察犬とも異なるその活動を、ホンダとホンダアクセスがクルマ作りで支援します。

そもそも「災害救助犬」って?

 2019年3月28日(木)、東京ビッグサイトにて開幕した「インターペット~人とペットの豊かな暮らしフェア」。様々な愛犬グッズなどを紹介するブースが並び、いろいろな動物関連イベントが開催される華やかな会場で、ひときわ注目を集めていたのが、「S.A.R. Dog Concept(エスエーアールドッグコンセプト)」です。こちらのクルマ、ホンダアクセスが発表した、ホンダの商用車「N-VAN」をベースとしたコンセプトモデル。車名の「S.A.R.」は、「Search and Rescue(捜索救難)」の略で、災害救助犬ボランティア活動のサポートをコンセプトに開発されています。

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「インターペット」に出展された「S.A.R. Dog Concept」(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。

「災害救助犬」と聞いて、筆者(大西紀江:ライター/編集者)がまず思い浮かんだのは、瓦礫の中を勇猛果敢に進み、人を掘り起こす大型犬の姿。と同時に、「警察犬とは違うの?」という初歩的な疑問でした。これらのイメージ、どうやらいろいろ、ちょっと違ったようです。

 今回「S.A.R. Dog Concept」の開発に協力したNPO法人 災害救助犬ネットワークによると、「災害救助犬」とは、「地震や雪崩などで瓦礫に閉じ込められたり、ピクニックや山歩きなどで行方不明になったりした不特定な人たちを、その優れた嗅覚を使って見つけ出す犬」をいい、つまり、雪や土や岩や木や、いろいろなモノで見えなくなっている人間を探し出すという訓練がされている犬たちなのだそうです。見つけ出すのは「この人」と限定されているのではありません。

 その一方で「警察犬」は、足跡や遺留品の臭いから、その持ち主、つまり特定の人のみを探します。ドラマなどで、手袋の臭いなどをかがせて「行け!」という号令でバッと駆け出す、あれが警察犬です。なお、現在はこれら両方ができる訓練を積んだ犬もいます。

 さらに災害救助犬は、見つけ出すのが仕事であって、掘ったり引っ張ったりして人を助け出すわけではありません。だから、犬種は大型犬でなくても大丈夫。ダックスフントやウェルシュコーギーといった小型犬も、災害救助犬の資格を取って活躍しているのだそうです。確かに、狭い瓦礫の隙間などには、小型犬のほうが入り込みやすいかもしれません。

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ホンダ「N-VAN」をベース車にカスタマイズされた「S.A.R. Dog Concept」(画像:ホンダアクセス)。

 何より筆者が一番驚いたのは、現在、活躍している多くの災害救助犬たちは、ボランティアだということです。普段は普通にペットとして暮らし、いざ有事の際には、飼い主と共に被災地などの現場へ向かって救助にあたります。もしかしたら、いつも散歩ですれちがう一見おっとりなあの子や、いつもご機嫌なその子も、何かあったらキリッと出動するのかもしれません。

「N-VAN」の広い室内を愛犬のために

 災害救助犬たちは、ごく普通のしつけから段階を経て様々な訓練を重ね、認定審査に合格したのち、現場で救助にあたります。先に触れたように、多くの場合はボランティアですので、飼い主が指導主(ハンドラー)となり、自分のクルマで現場に出動することになります。そのために必要な仕様を考慮し、開発されたのが、この「S.A.R. Dog Concept」なのです。

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ベース車両は積載スペースの広い「N-VAN」(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。
車外の収納ボックス。犬の排泄物はここへ(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。
専用ルーフキャリア。フロントには作業灯。写真右の日よけテントは別売(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。

 ベース車両の「N-VAN」は元々、広い積載スペースと積載作業の効率性を追求した軽バンとして、2018年7月に発売されたモデル。その使い勝手のよさから、趣味のクルマとしても人気です。ただ、災害救助は季節を選べず、どんな環境でも出動しなくてはならず、しかも被災地に向かうわけですから、クルマで寝泊まりすることも視野に入ってきます。今回の「S.A.R. Dog Concept」には、暑さに弱い犬たちが暑い季節でも快適な車内空間を保つために、ルーフには断熱塗装が施されています。塗料はセラミックビーズ入りで、少しザラザラした質感。トタンやスチール屋根などの建材用塗料なのですが、たとえばこれをクルマのマフラーに塗ると、エンジンがかかっていても手で触れることができるのだとか。

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メッシュの専用テールゲートを装備。床下には引き出し式の収納ボックス(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。

 さらに、換気用ファンやメッシュのテールゲートといった専用装備も搭載。「N-VAN」の低床フロアと助手席のフルフラット収納が作り出す広い室内空間によって、より快適な車中泊が実現できるようになっています。

 また、商用バンとしても重宝されている広い室内には、中型犬用のクレート(可搬式の犬小屋のようなもの)に加え、スライド式収納BOXなどさまざまな装備を収納でき、さらにルーフキャリアやテールゲートドアのラダーを備えて、収納・積載力も大幅アップしています。

想定は非常時のみならず、日々の訓練をも支えるコンセプト

 今回の開発のきっかけを「インターペット」の会場で、ホンダアクセスの加藤智久さん(デザイン担当)と、蓑和佳苗さん(商品企画担当)に聞きました。

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取材に応じてくれたホンダアクセスの加藤智久さんと蓑和佳苗さん(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。

 これまで災害の際に目にして以来、ずっと災害救助犬の存在に興味を持っていたという加藤さんは、「Honda Dog」で開発に携わったこれまでの経験から、「犬に負担をかけずに長距離移動し、車内で何日も過ごすことを必要としているシーンで、われわれがこれまでに得てきたスキルが生かせないか」と考えたのだそうです。

 より快適な移動、という面で考えれば、もっと乗り心地がいい大型のワゴン車などをベース車両にすることを思いつきますが、災害救助犬ネットワークの担当者から話を聞くうちに「必要とされるのは、最前線のさらにその先に進むこと」だと分かったそうです。より先に、より奥に行くためには、あえて小さなサイズということで、軽自動車の「N-VAN」がチョイスされたのです。走行困難な道に対応できるよう4輪駆動を選び、タイヤも悪路用のものに履き替えています。

 さらに、災害救助犬ネットワークの担当者に話を聞いたところ、現場に行くクルマには、「犬と人が1週間過ごせる荷物が乗ること」が必要なのだそう。効率よく荷物を収納するための装備をはじめ、いろいろ意見を聞きながら開発を進めるうちに、当初の想定と違って変更したことも。

 たとえば、「N-VAN」はフロントにエアコンの吹き出し口が付いているため、当初は助手席を倒した所にクレート(キャリーケース)を置いて、直接犬にエアコンの風を送ろうと考えていたそうです。ところが、野外での訓練を重ね、四季折々の気温に体を慣らしている災害救助犬たちには、基本的にエアコンは使わないのだそうです。そこで外気を取り入れることを考え、車体後方左右に換気用のファンを設置しました。床にはクレートをしっかり留めるためのフックも追加。「N-VAN」は商用車として、こうしたパーツを必要なところに取り付けられるような仕様があらかじめ施されていることが役に立ちました。リアサイドのカーテンもリクエストから追加されたものです。

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車両最後部の左右に設けられた換気用ファン。車両内側より(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。
換気用ファンの排気口。車両外側より(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。
クレートを留めるフック(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。

 開発のために救助犬の訓練などを見に行って、蓑和さんが一番感銘を受けたのは、犬たちが楽しそうだったことだそうです。災害救助犬というと、「過酷な現場でけなげに働く」というイメージがありますが、探索というのは犬にとってかくれんぼ遊びの延長線上なのだそうです。大好きな飼い主である指導主(ハンドラー)とお出かけし、上手にできたら褒められる、という楽しい体験なのですが、それを実現するには、現場で犬の疲れ具合を判断したり、風向きを見てルートを決めたりという指導主の能力が大きく影響します。犬も訓練しますが、実は飼い主である指導主の知識や能力も大事なのだとか。大変な訓練を重ね、こうした活動をボランティアでしている指導主たちには頭が下がります。

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実際に災害現場で使用されているホンダ製の発電機(左)。精密機器にも使用可能。ガスボンベで動作し、煮炊き用のコンロと燃料を共有できる(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。

 様々な能力が備わる「S.A.R. Dog Concept」ですが、ここで必要としているものは、災害救助の現場に限ったものではありません。災害時には状況によって、誰でも「車中泊」を選択するシーンが出てきます。「クルマで寝泊まりする際に何が必要で、どうしたら快適か」ということを立ち止まって考えるきっかけというのも、このクルマの意義だと蓑和さんは考えています。「知識があれば、いざというときの心構えが違います。有事の際のヒントになれば」という言葉が、胸に響きました。

 さらに、この「S.A.R. Dog Concept」、いろいろな仕様が施されていますが、すべて保安基準に適合しており、ナンバーを取得して走行が可能です。今後は実際に災害救助犬ボランティアの人たちに見てもらったり、さまざまなイベントで展示したりして、広く意見を取り入れながらバージョンアップも考えているそうです。

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ホイールのセンターキャップには足跡マークが(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。

 災害救助犬は、1回合格したらOKというものではなく、日々、訓練を重ねることが大切なのだそうです。指導主の指示に従う「服従訓練」は毎日行いますし、人の呼気を追う実践的な「救助訓練」はもちろん、大きな音や足場の悪いところにも対応できるような「環境訓練」も欠かせません。つまり、災害時のみならず日頃から様々な場所に訓練へ出かける必要があります。その移動を少しでも快適なものにしよう、というのも、「S.A.R. Dog Concept」の目的のひとつです。人命を救うために日々たゆまぬ努力を重ねてくれている犬たちと、その指導主たちを、こういった形で支えたいと思う、その発想に、筆者は胸が温かくなりました。

 何か災害が起こったとき、「自分に何ができるだろう」と考え、自分の無力さに歯がゆい思いをすることも多々ありますが、今回このように、自分にできること、自分の得意なことを生かして、最前線で活動する人や犬たちの下支えをする、というやり方があるのだということを、ホンダが「S.A.R. Dog Concept」を通じて教えてくれた気がします。

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「インターペット」ホンダアクセスブースの様子(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。

 もちろん災害救助犬に限らず、釣りやアウトドアに愛犬と出かけるといった用途にも、魅力的な仕様や工夫が詰まったモデルとして大変興味深い1台。ぜひ実車に触れて、その細かい工夫に驚いていただきたいです。もしもこれが市販モデルとなって街で見かけたときには、災害救助犬たちに心の中でエールを送りたいと思います。

※ ※ ※

 ホンダアクセスは、この「S.A.R. Dog Concept」と、2019年1月発売のHonda純正愛犬用アクセサリーHonda Dogシリーズを装着した「CR-V」を、2019年3月28日(木)より東京ビッグサイトにて開催されている「インターペット~人とペットの豊かな暮らしフェア~」に出展しています。

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ホンダアクセスが展開するクルマと愛犬のためのブランド「Honda Dog」のアイテムを装備した「CR-V」も出展(2019年3月28日、乗りものニュース編集部撮影)。

●「インターペット~人とペットの豊かな暮らしフェア~」
・会期:2019年3月28日(木)から3月31日(日)まで(28日はビジネスデー)
・会場:東京ビッグサイト
・開場:10時から17時
・入場料:大人(中学生以上)2000円(一般割引事前登録者、割引チラシ持参者は1500円/小学生以下、ペットの来場は無料/障害者手帳所持者および同伴者1名無料)
・主催:一般社団法人ペットフード協会、一般社団法人日本ペット用品工業会、メッセフランクフルトジャパン株式会社

●ホンダアクセス
http://www.honda.co.jp/ACCESS/

●ホンダドッグ
http://www.honda.co.jp/dog/

【了】

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Writer: 大西紀江(ライター/編集者)

静岡・伊豆出身のライター、編集者。乗りものオタクの総本山ともいうべき某出版社の編集を経て、フリーランスに。以来、自動車を中心に模型から時計まで、幅広く執筆&編集を手掛ける。象の調教師の免許あり。

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