首都圏~北海道のフェリー、なぜ茨城・大洗発着? 東京から直通バスも登場 便利になる大洗〈PR〉
首都圏と北海道を結ぶ商船三井フェリーの「さんふらわあ」は、なぜ東京港ではなく、茨城県の大洗港発着なのでしょうか。実は大洗港は利便性が高く、いま、直通バスの試験運行も始まっています。
東京から北海道へ行くのに、まず南へ?
首都圏と北海道を結ぶフェリーは現在、商船三井フェリーが4隻の「さんふらわあ」を、茨城県の大洗(おおあらい)港と、北海道の苫小牧(とまこまい)港のあいだで運航しています。
大洗町は水戸市の隣町で、東京都心からおよそ100kmの位置。東京も北海道と海でつながっているのに、なぜ東京から離れた大洗発着なのでしょうか。
大きいのは「時間的メリット」です。東京港から北にある苫小牧港を目指す場合、まず南へ進まねばなりません。房総半島が大きく張りだしているためで、大洗まで海路だと約300km。さらに東京湾では、一部で12ノット(約22km/h)の速度規制もあります。
一方、東京から大洗まで陸路なら100km程度。しかも大洗は、常磐道や北関東道といった高速道路を活用して行ける場所なため、40km/h程度で航行するフェリーに対し、時間的アドバンテージはさらに大きくなります。
実は1999(平成11)年までこのフェリー、大洗港ではなく東京港発着でした。その当時のダイヤは以下の通りです。
東京 23:30 → 苫小牧 翌々5:30着(火、水、金、土出発) 所要30時間00分
苫小牧 11:45 → 東京 翌17:00着(日、火、木、金出発) 所要29時間15分
※1997年9月以前は東京~苫小牧間直行、以降は途中で大洗に寄航する形で運航。ダイヤは同じ。
対し、現在のダイヤはこうなっています。
【夕方便】
大洗 19:45 → 苫小牧 翌13:30(毎日運航) 所要17時間45分
苫小牧 18:45 → 大洗 翌14:00(毎日運航) 所要19時間15分
【深夜便】
大洗 01:45 → 苫小牧 19:45(毎日運航) 所要18時間00分
苫小牧 01:30 → 大洗 19:30(毎日運航) 所要18時間00分。
所要時間は3分の2以下、10時間以上も短縮されています。トラックやマイカーでの利用が多いフェリー。高速道路が充実したいま、道路が混雑する都心ではなく、大洗から乗船・下船するほうが利用者にとって便利で早く、結果として低コストということが多々あるわけです。実際、商船三井フェリーによると大洗港発着になったことは、物流事業者やマイカー利用者からおおむね好評といいます。
ちなみに所要時間の短縮により、船の運航効率も向上。東京港発着時代、1隻あたり週2往復だったものが、大洗発着で所要時間が短くなり、3往復できるようになったそうです。
直通バス登場! 行きやすくなっている大洗港
とはいえ、クルマで行く場合はいいとしても、公共交通利用だと大洗港は「どこにあるかよく分からない」「遠い」「東京から直通列車がなく、荷物を持っての乗り換えが面倒」と思うかもしれません。
そこで、東京駅八重洲口と大洗港を結ぶ直通バスの試験運行が、茨城交通によって2018年7月17日(火)から始まりました。バスには無料Wi-Fi、トイレが用意されているほか、車両によってはコンセントも設置されており、座っているだけでフェリーターミナル。もちろん、フェリーに接続する形での運行です。大きな荷物を持っている場合も、バスなら床下のトランクに預けられるため、楽に移動できます。
【下り】
東京駅 14:20 → 大洗フェリーターミナル 16:44
【上り】
大洗フェリーターミナル 15:00 → 東京駅 18:28(平日・土曜)/17:58(日曜・祝日)
下りは、19時45分の出港より約3時間早い到着ですが、17時半ごろには船内に入ってゆっくりできます。レストラン(18時30分より)や展望浴場も、出航前から利用OKです。
上りについて、曜日で東京駅到着時間が異なるのは、道路の渋滞状況によるものです。時間帯が時間帯であるため、ある程度の混雑は避けられないところですが、茨城交通は、高速バスからつくばエクスプレスへ乗り継ぐ「レール & 高速バスライド」を実施中。途中、常磐道の八潮PA(埼玉県八潮市)で降車し、徒歩数分のところにあるつくばエクスプレスの八潮駅から電車に乗り継ぎ、秋葉原方面へ向かうことも可能です。しかも、八潮駅から秋葉原駅方面の各駅まで使えるきっぷがバス車内で、100円で購入できます。
なお苫小牧港側でも、札幌駅や苫小牧駅、新千歳空港方面へ、バスが接続しています。 なお苫小牧港側でも、札幌駅や苫小牧駅、新千歳空港方面へ、バスが接続しています。
お得なきっぷで東京~札幌間、9990円から!
旅行で首都圏と北海道を移動するにあたって、メジャーな手段は飛行機です。絶対的なスピードがあるほか、近年はLCCの発達で、安く行きやすくなっています。そこでフェリーを選ぶ理由は、どこにあるのでしょうか。
個人的には、窓外に大海原が広がる展望浴場、夜中の屋外デッキから眺める星空、太平洋のかなたからの日の出、水平線の先に大きくなっていく陸地などなど、非日常性の高い「船旅」自体が魅力ですが、そうした感覚的ではないものを挙げるとすると、やはり「安さ」でしょう。
「パシフィック・ストーリー(東京・札幌連絡きっぷ)」
「おたる・ストーリー(東京・小樽連絡きっぷ)」
「あさひかわ・ストーリー(東京・旭川連絡きっぷ)」
「ふらの・ストーリー(東京・富良野連絡きっぷ)」
商船三井フェリーでは、フェリーと東京~大洗間、苫小牧~札幌・小樽・旭川・富良野間のバスを組み合わせた上記の割引きっぷを発売しており、運賃は、時期によって異なりますが、たとえば東京~札幌間だと片道9990円(大人1名)からです。先述の試験運行している直通バスも利用できるほか、「宿泊代込みでこの値段」とも考えられます。JRの「青春18きっぷ」などと組み合わせてもよさそうです。
また差額の支払いで、「スイート」をはじめ各等級の部屋、設備を利用できます。
「雑魚寝」は過去の話 最新フェリー「さんふらわあ さっぽろ」の実力とは?
昭和生まれの筆者にとって一昔前、フェリーは「雑魚寝」「二段ベッド」という印象でした。しかしその印象は近年、大きく変わっています。「個室化」などプライバシー確保が大きく進んでいるほか、コンセントなどの設備も充実しているのです。
特に、大洗~苫小牧航路の「夕方便」に使用されている「さんふらわあ さっぽろ(3代目)/ふらの(2代目)」は、2017年に就航したばかりの最新フェリーで、ドッグラン、船内Wi-Fiやそれを使ったエンターテイメントサービスも用意。以下に「さんふらわあ さっぽろ/ふらの」の船内を紹介します。なお「さっぽろ」と「ふらの」は姉妹船で、設備は同様です。
スイート(洋室)
1室のみある部屋で、定員は2名(最大3名)。専用のバルコニーほか、バス、トイレ、テレビ、冷蔵庫、電気ケトル、ドライヤーなどが用意されています。乗船中、レストランでの食事もサービス。広さは客室37.91平米、バルコニー15.81平米です。
専用のバルコニーには、夏季のみですが、チェアとテーブルも備えられます。
先述した、フェリーとバスを組み合わせた割引きっぷ利用の場合、追加で必要な差額運賃は3万5260円です(A期間、片道、大人1名分)。
プレミアム(洋室)
20室用意されており、定員は2名(最大3名)。こちらも専用のバルコニー、バス、トイレ、テレビ、冷蔵庫、電気ケトル、ドライヤーなどが用意されています。乗船中、レストランでの食事もサービス。広さは客室17.23平米、バルコニー6.81平米です。
専用のバルコニーには、夏季のみですが、チェアとテーブルも備えられます。
また20室のうち、バリアフリー対応の部屋が1室あり、ベッドは電動。広さ25.65平米、こちらはバルコニーなしです。
先述の割引きっぷ利用時、追加で必要な差額運賃は1万7370円になります(A期間、片道、大人1名分)。
スーペリア(和洋室/和室/洋室)
部屋数がもっとも多い個室で、「オーシャンビュー」「インサイド(窓なし)」「和室」「洋室」「和洋室」「ウィズペット(ペット可)」など、定員が2名から4名のさまざまなタイプが70室。人数や、小さい子どもがいるから和室といったように、状況に応じて選べます。
室内にはシャワー&トイレ、テレビ、冷蔵庫、電気ケトル、ドライヤーなどを用意。ペット可の部屋には、飲み水を入れるボウルなども備えられます。
先述の割引きっぷ利用時、追加で必要な差額運賃は、オーシャンビューの部屋が9170円、インサイドの部屋が7170円です(A期間、片道、大人1名分)。
コンフォート
カプセルホテルのようなプライバシーが確保された設備で、180人分を用意。4名分ごとで1区画になっているため、グループでの利用にも向きます。
それぞれのベッドにテレビやスリッパ、荷物スペースなどのほか、コンセントも用意。なお船内には、誰でも利用できるコイン返却式のコインロッカーが用意されており、そちらへ荷物を預けることも可能です。
先述の割引きっぷ利用時、追加で必要な差額運賃は4590円になります(A期間、片道、大人1名分)。
ツーリスト
いわゆる桟敷席ですが、仕切りカーテンが備えられており、プライバシーにも配慮されているのが特徴です。
定員25名の部屋が1室、11名の部屋が2室あり、各席に枕やマットレスなどほか、読書灯、コンセントも用意。
この「ツーリスト」は先述の割引きっぷ利用時、追加運賃なしで使うことができます。
多彩な船内設備 自分の部屋だけで過ごすのはもったいない?
男性用と女性用、それぞれの展望浴場(無料)があり、乗船時から下船時まで利用可能(深夜帯をのぞく)。サウナ(無料)も設置されています。
遊具も用意された「キッズランド」では、子どもを遊ばせることができます。深夜帯以外に利用可能です。
ベビールームはおむつ交換台、授乳室のほか、流し、給湯器、電子レンジも備えられています。
ペットを遊ばせられるドッグランには、洗い場も設置。先述した、ペットと一緒にいられるスーペリアの部屋のほか、ケージに預けられるペットルーム(有料)も用意されています。
ショップでは北海道や茨城のお土産、名産品、アルコールを含むドリンクやお菓子、日用品、オリジナルグッズなどを販売。ただ、酔い止めの薬は薬事法の関係から扱っていないため、乗船前に用意する必要があります。
大海原を楽しみながらの食事が可能なレストランは、夕食、朝食ともバイキング形式。料金は、大人が夕食1900円、朝食1050円、小学生は夕食1050円、朝食800円ですが、大人2400円、小学生1650円の「2食セット券」もあります(小学生未満は無料)。
なお夕食バイキングは、2018年10月1日(月)よりセットメニューに変更される予定です。
昼には、「さんふらわあオリジナルキーマカレー(スープ付)」500円といった軽食の提供も。ちなみに、船内には給湯室もあるので、カップラーメンで安くすますのもアリでしょう。
このほか船内には、自動販売機コーナー(ソフトドリンクのほかアルコール類、おつまみ、アイスクリームもあり)、喫煙コーナー、無料コインロッカー(有料の冷蔵もあり)、ゲームコーナーなどが設けられています。
「片道だけ」でもいいのでは?
フェリーの旅は個室化が進んでいるうえ、共用スペースも充実しており、揺れの少ないときは、まるでリゾートホテルでくつろいでいるかのよう。そして、窓の外を見れば大海原――。所要時間的に往復は難しいとしても、片道だけでもフェリーを使うと、より思い出深い旅になるかもしれません。
ちなみに船酔いが心配な場合、乗りもの酔いの薬を、乗船してからではなく、用法通り乗船30分前に服用するのが最も効果的な対策だそうです。
●「商船三井フェリー」ウェブサイト
お得なプランやQ&A、モデルコースなど、「首都圏~北海道フェリー旅」について詳しくはこちら。ウェブ予約もできます。
https://www.sunflower.co.jp/
【了】
Writer: 恵 知仁(乗りものライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。