空気の力や重力を活用するリニア中央新幹線の非常口工事 高さは慣れるのか

建設が進むリニア中央新幹線。その都市部非常口のうち、「ニューマチックケーソン工法」でつくられた最初のもの、坂下非常口が完成しました。その現場で地の底へ潜り、自然の力を活用した工法の仕組みなどを取材しました。

この記事の主な内容

・長さ約34.2kmの第一中京圏トンネル
・「ニューマチックケーソン工法」で最初の完成
・寝転がって撮影するカメラマン
・こういう場所は慣れるらしい
・目の錯覚でそう見えませんが「真円」です
・約10.1kmの第一中京圏トンネル坂下西工区
・シールドマシンで鉄筋コンクリートごと掘ってしまう
・地質の状況や地下水の高さによって工法を判断
・空気圧に重力 自然の力を活用する「ニューマチックケーソン工法」
・水の力を借りることも

【画像枚数】全17枚

長さ約34.2kmの第一中京圏トンネル

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リニア中央新幹線坂下非常口の建設現場(2020年12月24日、恵 知仁撮影)。

 JR東海が、まず品川~名古屋間で進めている中央新幹線の建設。愛知県春日井市でその「坂下非常口」が2020年10月29日(木)に完成し、12月24日(木)に報道陣へ公開されました。本線トンネルを掘削するシールドマシンの基地として、開業後はトンネル内の換気や異常時の避難、保守作業で使用する施設です。

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愛知県内における中央新幹線の路線概要(2020年12月24日、恵 知仁撮影)。

 多くの区間で地下を行く中央新幹線。都市部のトンネルでは、約5kmごとに立坑で非常口が設けられます。坂下非常口は、約34.2kmある第一中京圏トンネルに設けられた、そのひとつ。品川から約267km、名古屋から約18kmの地点です。

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愛知県内における中央新幹線の工事状況(2020年12月24日、恵 知仁撮影)。

 愛知県内の中央新幹線は約24.8km全域が第一中京圏トンネルで、非常口は春日井市内の西尾(さいお)町、坂下町、熊野町、勝川町、名古屋市内の中区三の丸に設けられます。このうち西尾町は都市部ではなく山岳部の非常口であるほか(立坑ではなく斜坑)、保守基地をあわせて設置。また中区丸の内には変電施設が置かれます。

「ニューマチックケーソン工法」で最初の完成

 この「中央新幹線坂下非常口新設工事」は、2016年10月12日から2020年10月29日までが工事期間。施工会社は前田建設工業です。なお今回の「完成」は、避難設備など非常口としての機能全てが完成したというわけではなく、その躯体が完成した、という意味になります。

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都市部トンネルと非常口の構造(2020年12月24日、恵 知仁撮影)。

 中央新幹線の都市部非常口は、2019年12月に北品川非常口(東京都品川区)が完成。坂下非常口はそれに続く2か所目の完成ですが、「ニューマチックケーソン工法」(後述)によるものとしては、最初の完成です。

 工事は、発生土の運搬に関わる地元への説明(土は瀬戸の鉱山跡へ持っていった)、非常口本体完成後に行う予定だった一部作業の前倒しでの実施、機械の不具合などによって1年4ヶ月、工期の延伸があったといいます。

寝転がって撮影するカメラマン

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外から見た坂下非常口(2020年12月24日、恵 知仁撮影)。

 坂下非常口を外から見ると二重丸になっていますが、内側の丸が非常口本体の壁。その厚さは、上部で約4.0m、下部で約4.7mもあります。なお外側の丸は、建設にあたって最初に設けられた土留め壁(周囲の土の崩壊を防止する壁)です。

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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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