デフレの荒波を「船の魅力」で脱出 最新クルーズ船、その実力とは

アメリカのロイヤル・カリビアン・クルーズが、疑似スカイダイビングやロボットバーテンダーといった様々な新機軸を搭載した新型のクルーズ客船を相次いで登場させました。そこにはどんな背景があるのでしょうか。クルーズ界の問題、また現在の世界経済がそこに見えてきます。

クルーズ界にも起きていたデフレ、そして熱い中国

 アメリカのクルーズ船社団体である「CLIA」によれば、アメリカ人がクルーズを選ぶとき、理由の第一は予算(29%)で、ついで目的地(24%)というアンケート結果が出ています。しかし、世界のクルーズ目的地のうち一番人気のカリブ海(シェア32%)の集客は2014年、前年比マイナス2.4%と陰りが見えており、アラスカや地中海も頭打ちです。乗船料金も激しい競争のために7泊クルーズで549ドル、4泊クルーズが339ドルからといった低価格がネット上で踊るなど極限まで下がり、クルーズ会社の利益を圧迫しています。

 RCLは「船の魅力」でこうしたダンピング競争から抜け出そうとし、その完成形が今回の「クアンタムプロジェクト」だったのです。同時に旅客ターゲットも高齢者中心からファミリーへと舵を切っています。

 目的地についても意欲的で、今回登場した「アンセム」は、欧州でお披露目したあと秋にはアメリカ東海岸へと向かいますが、昨冬にカリブ海でお披露目された「クアンタム」は北半球の本格的な需要期である今年6月から、「いま最大のポテンシャルを持つ中国市場」(RCL)へ配船。そしてさらに「通年で東アジアに張りつける」というクルーズ界の常識に挑戦するようなスケジュールを、RCLは発表したのです。乗船料は5泊で1000ドル前後からと強気な価格設定ですが、それでもこの夏のクルーズは、ほとんど中国人乗客だけで完売か残室少々、という売れ行きです。

 出発港は上海。行く先は仁川、釜山など韓国、博多、長崎、鹿児島などの九州地区、それに那覇、台湾などですが、残念ながら日本人も上海まで行かないと乗船不可。話題の船ですから、空き室を見つけて上海からでも乗りたいところですが、日本人にはちょっとだけ残念な展開かもしれません。

【了】

Writer:

1949年生まれ。業界紙を経て1980年、海事プレス社へ入社。1989年、雑誌『CRUISE』創刊に参画し、翌年から編集長。2008年、海事プレス社の社長へ就任。2012年退任。この間、取材、プライベートを含め35隻の客船に乗船して延べ55カ国を訪問。地方自治体や業界団体主催の講演会などに多数出席。

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