今や日欧航路は週1便 空港に続き「ハブ港湾」も韓国へ? 国交省に聞く港湾政策

大型コンテナ船が寄港できない東京港

――中国や韓国の港にはそれだけ多くの荷物があるのですね。

松良さん「釜山の場合、仁川空港と同じように国を挙げて巨大なコンテナターミナルの整備を行っています。釜山新港のバース延長は6850m、大型船が入港できる水深16m以上の岸壁は21バース、荷降ろしを行うガントリークレーンは65基ありますが、横浜港南本牧埠頭のバース延長は1100m、ガントリークレーンは10基、水深16m以上の岸壁は横浜港全体でも6バース、東京港に至っては水深16m以上の岸壁がひとつもありません」

――今後の具体的な方策を教えてください。

松良さん「日本の場合、韓国のような集中投資を行ってきませんでした。今後は京浜港と阪神港に集中投資を行い、地方の港から釜山や上海を経由して欧米に運ばれている荷物を京浜港と阪神港というふたつの拠点、いわゆる「国際コンテナ戦略港湾」に集めて、欧米への直航便を誘致しようとしています。京浜と阪神のふたつである理由は、日本は国土が南北に長いため、1か所にしてしまうと、かえって輸送コストが高くなってしまう問題があります。また日本の場合、西日本だけでもイギリス一国を上回る国内総生産(GDP)がありますので、西日本の貨物を阪神港に集めるだけで十分太刀打ちできると考えています」

――今後ハブ港湾の整備を行うにあたって、日本の船会社が単独で欧米への直行便を開設するのは難しいのですか。

松良さん「日本郵船や商船三井は日本から東南アジアに向かう航路などを積極的に展開していますが、北米や欧州方面の便についてはアライアンスの一部を形成しているに過ぎません。そもそも日本の船会社の存在感は国際コンテナ船においては大きくないのです」

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同じ縮尺で比較すると、アジア各港の規模がケタ違いであることがわかる(画像出典:国土交通省)。

――集荷方法以外に対策はないのですか。

松良さん「コスト面では港湾コストを下げることも考えています。日本を100とすると釜山は60、上海は99、シンガポールが86です。そのほか港湾の運営体制を変えました。これまで横浜港は横浜市、東京港は東京都といった地方公共団体が運営していました」

――運営体制に問題はないのですか。

松良さん「競争力のある港にするため、国と神戸市、大阪市、民間企業が出資した阪神国際港湾株式会社や国と横浜市、民間企業が出資した横浜川崎国際港湾株式会社を設立し、国、港湾管理者、民間のオールジャパンで運営する体制を構築しています。シンガポールや韓国、中国も国を挙げて行っていますが、日本にはこれまで国を挙げて港を運営する考えがありませんでした。また、水深を深くする工事や防波堤の設置工事など巨額の費用が必要であり、たとえば岸壁や防波堤、浚渫(しゅんせつ)という港湾整備の土木工事には数十億円~数百億円かかります」

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コメント

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4件のコメント

  1. 韓進海運も現代商船も経営が苦しいから、釜山港も今後はどうなるか分かりませんけどね。

  2. 東京港は羽田空港の更なる拡張など航空便需要も続くのだから、「空は東京・海は横浜」とキッチリ役割分担を決めて横浜港へ集中投資をする必要があると思う。内輪で取り合いも原因ではないの?「あれもこれも東京」の一極集中は個々でもデメリットなのでは?

  3. 個人的には日本海側、とりわけ中国やロシア便の天然ガスなら福井や富山、新潟に大規模な港があっても良いと思う。
    実際、日本の貿易相手の75%が中国やロシアなどと言ったユーラシア大陸、残り25%の内、15%位は、豪州やニュージーランドなどでアメリカとの貿易は1割もない。
    実際、アメリカとの貿易額(一時期、4割→1割以下)は減少傾向にあり、アメリカの国力低下と共に中国やロシア、イランなどのLNGや石油などの輸入が増加している。
    東京(や仙台などの特に東北太平洋側や東関東)に大規模な港を作っても貿易相手がアメリカだけになるから、日本海側や西日本を強化する方向を示す必要があるだろう。

  4. ぼくちんさんの
    >「空は東京」

    今の様に羽田を拡張できて、便数も増やせるなら、成田を作る必要はなかった。この2空港間で乗り継げず、ハブ空港になってない。地方空港からの旅客ハブ機能は仁川にかっさらわれた。

    神戸大阪横浜川崎東京の個別の港湾運営整備から国の統合運営に変わるのはいいが、京浜と阪神に分ける必要は、本当にあるのか? どちらか一方に集中した方が良くないか? 空と同じ事にならなければよいのだが。