今や日欧航路は週1便 空港に続き「ハブ港湾」も韓国へ? 国交省に聞く港湾政策

日本の空港が“アジアのハブ”の地位を脅かされていることを聞いたことがあるかもしれませんが、実は近年、港についても同じ状況に追い込まれています。その背景と対策を国土交通省に聞いてみました。

台頭するアジアの港

 近年、韓国・仁川空港などの台頭によって、成田空港が“アジアのハブ空港”地位を脅かされている話を聞いたことがある人は多いかもしれません。

 しかし近年は空港だけでなく、港も“アジアのハブ”の地位を追われつつあります。その背景と対策について、国土交通省港湾局 国際コンテナ戦略港湾政策推進室の松良精三室長に話を聞きました。

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近年コンテナ船は大型化が進み、20フィートコンテナを2万個近く積載できる船も登場(写真出典:photolibrary)。

――日本のコンテナ港湾の国際的地位が相対的に低下し、韓国・釜山港などの存在感が増しています。

松良さん「コンテナ港湾の取扱量は1976(昭和51)年当時、神戸が世界2位、東京が8位、横浜が15位と世界トップクラスでした。しかしながら、2015年は東京が30位、横浜が52位、神戸は59位と日本の港は低迷している一方、上海が世界1位であることをはじめ、10位までのうち、7つが中国の港であるほか、韓国・釜山も世界6位につけています」

――アジアのハブ空港が成田から韓国・仁川に移ってしまったのと同じようにアジアのハブ港湾が釜山などに移ってしまったのですね。それによってどのようなデメリットが生じるのでしょうか。

松良さん「日本から北米や欧州に荷物を運ぶ際に、一度釜山などのハブ港湾を経由しなければならず、トランシップ(荷物の積み替え)によるデメリットが生じてしまいます。そのひとつ目は、当然ですが直航便よりも時間がかかってしまうことです。ふたつ目はコストの問題。トランシップには、飛行機の着陸料にあたる入港料や施設使用料、荷役料が必要です」

松良さん「みっつ目が一番の問題ですが、トランシップの際に荷降ろしの衝撃で積み荷が破損したりすること。荷主の電機メーカーや自動車部品メーカーにとって北米や欧州は非常に大きな市場で、日本は彼らが北米や欧州に製品を輸出することで外貨を稼いでいます。その製品がトランシップでダメージを受ければ、日本の電機メーカーや自動車部品メーカーは信頼を失ってしまいます」

――日本の港がハブ港湾の地位にあった時代は、北米や欧州に直接荷物を運べていたわけですね。

松良さん「その通りです。日本から北米や欧州に荷物を直接運ぶことは国益につながります。ところが近年、北米や欧州への直行便は激減しており、京浜港から北米に向かう便は1998(平成10)年の週41便から2015年は週22便に、欧州に向かう便は同じく週11便から週2便に、阪神港から北米に向かう便は週34便から週8便に、欧州に向かう便は週11便から週2便に減っています。日本から欧州に向かう2便はいずれも京浜港、名古屋港、阪神港を経由していますが、このうち1便が2016年9月に廃止されてしまうため、日本から欧州に向かう便は週1便になってしまいます」

――ちなみに欧州のどこに向かうのですか。

松良さん「ロッテルダムやルアーブル、ハンブルクなどに寄港します。週1便になってしまうと企業は在庫コストが発生し、商品を売る機会も減ってしまいます」

――残る1便はどの企業によって運航されるのですか。

松良さん「海運企業も航空会社のように共同運航を行うアライアンスを作っており、残る欧州便は世界17%のシェアを持つHapag-Lloyd(ドイツ)、APL(アメリカ)、Hyundai(韓国)、OOCL(香港)、日本郵船、商船三井の「G6アライアンス」によって運航されます。コンテナ船は近年大型化が進んでおり、世界最大のコンテナ船は長さ400m、1万9500TEU(1TEU=長さ20フィートコンテナひとつ分)もの積載能力を持ちます。大きなコンテナ船は採算上、たくさんの荷物を集める必要があるため、荷物が少ない日本の港ではなく、荷物が多い中国や韓国の港に寄港するようになります。この流れが加速すると、日本から欧米に荷物を輸送するには中国や韓国の港でトランシップを行う必要が生じてしまい、日本の電機メーカーは韓国のサムスンなどと不利な条件で競争せざるを得ません。北米や欧州への直行便を作るのが私たちの政策の目的です」

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コメント

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4件のコメント

  1. 韓進海運も現代商船も経営が苦しいから、釜山港も今後はどうなるか分かりませんけどね。

  2. 東京港は羽田空港の更なる拡張など航空便需要も続くのだから、「空は東京・海は横浜」とキッチリ役割分担を決めて横浜港へ集中投資をする必要があると思う。内輪で取り合いも原因ではないの?「あれもこれも東京」の一極集中は個々でもデメリットなのでは?

  3. 個人的には日本海側、とりわけ中国やロシア便の天然ガスなら福井や富山、新潟に大規模な港があっても良いと思う。
    実際、日本の貿易相手の75%が中国やロシアなどと言ったユーラシア大陸、残り25%の内、15%位は、豪州やニュージーランドなどでアメリカとの貿易は1割もない。
    実際、アメリカとの貿易額(一時期、4割→1割以下)は減少傾向にあり、アメリカの国力低下と共に中国やロシア、イランなどのLNGや石油などの輸入が増加している。
    東京(や仙台などの特に東北太平洋側や東関東)に大規模な港を作っても貿易相手がアメリカだけになるから、日本海側や西日本を強化する方向を示す必要があるだろう。

  4. ぼくちんさんの
    >「空は東京」

    今の様に羽田を拡張できて、便数も増やせるなら、成田を作る必要はなかった。この2空港間で乗り継げず、ハブ空港になってない。地方空港からの旅客ハブ機能は仁川にかっさらわれた。

    神戸大阪横浜川崎東京の個別の港湾運営整備から国の統合運営に変わるのはいいが、京浜と阪神に分ける必要は、本当にあるのか? どちらか一方に集中した方が良くないか? 空と同じ事にならなければよいのだが。