ゆったり船旅「アフターコロナに強み」 豪華志向は加速 フェリーさんふらわあ・赤坂社長〈PR〉

新型コロナウイルスで失速を余儀なくされた2020年のフェリー業界ですが、その後、風向きは変わってきています。近年の豪華志向から「さらにハイグレード」になるという船旅の今後、フェリーさんふらわあの赤坂光次郎社長に聞きました。

一時は旅客「95%減」

 新年あけましておめでとうございます。

 昨年、2020年は、フェリー業界にとってまさに激動の1年になりました。年明けとともに世界的な船舶燃料の環境規制へ対応し、コストアップしたところに、新型コロナウイルスが経営を直撃。その後はどうなったのでしょうか。関西~九州に3航路を持つフェリーさんふらわあの赤坂光次郎社長に、2020年の振り返りと2021年の展望を聞きました。

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鹿児島・志布志へのフェリーが発着する大阪南港さんふらわあターミナル。

――新型コロナウイルスの流行が始まった2020年1月から、緊急事態宣言下の5月にかけて、旅客数はどのように推移したでしょうか?

 2月までは前年とほぼ変わりませんでしたが、3月は前年比で旅客数30%減、4月から5月にかけては緊急事態宣言下でも「移動客と物流を止めてはいけない」という使命のもと運航を継続し、95%くらいまで減少しました。

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フェリーさんふらわあ 赤坂光次郎社長。

 6月は同70%減ほどの水準に回復したものの、その後の「第2波」により、8月は80%以上、9月は75%ほど、それぞれ減っています。10月と11月は「Go Toキャンペーン」もあり回復しましたが、それでも前年比で3~4割減といったところです。

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「さんふらわあ さつま」のトラック甲板。

 ただトラックに関しては、緊急事態宣言のころでも前年比で10~15%減くらいで、やはり「モノ」は動いていました。しかしそれは生活用品や雑貨・食料品であり、飲食店向けの飲料や工業用品の荷物は減っています。12月の段階でも、フルには戻っていません。

――新型コロナウイルスの流行初期に起きたクルーズ船での感染拡大は、公共交通機関であるフェリーとは異なるものの、やはり影響が大きかったのでしょうか?

 イメージダウンになったのは間違いありません。このため、感染対策にものすごくお金をかけ、PRも重点的に行いました(後述)。ただフェリーはクルーズ船のように何日も乗っているわけではありません。船内はひとり一人のスペースが広く密になっていませんし、感染リスクが高いわけではないとご理解いただき、お客様がフェリーに戻ってきています。

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「さんふらわあ さつま」共用部の吹き抜け。コロナ前は天井を使ったプロジェクションマッピングなども行われていた。

――こうした変化にスタッフはどう対応したのでしょうか?

 陸上社員全員にノートPC・スマートフォンを渡し、自宅から会社のシステムへアクセスできるようにするなど、テレワーク対応のシステム化を一気に進めました。お客様が少ないなかでも、社員ひとりひとりが知恵をだし、考えて行動を起こすようになりました。

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コロナ禍は社員ひとりひとりの変化をもたらすきっかけになったという。

 また船員は陸上社員以上に、感染予防に気を使っています。プライベートにおいても、あまり外出しないようにと生活の制限を敷いており、気が緩みそうな時期もそれを徹底してくれました。ひとたび感染者が出れば、船を欠航せざるを得ず、公共交通機関としての使命に反します。みんながそれを認識していることが、とても心強く、またご家族にも感謝しています。

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乗船前の待合所で検温。健康確認チェックシートへの記入や、体調の申告なども行う。除菌装置も稼働させている。

様変わりした船内 それが追い風にも

――コロナ禍での運航において、具体的にどのような取り組みをしたのでしょうか?

 各船の旅客定員をおよそ3分の2に減らしました。ベッドやスペースも間引き、たとえば16人部屋で5人から6人といった具合です。テーブルの椅子も間引いたほか、パブリックスペースに大勢が集まらないよう、「なるべく部屋でお過ごしください」といったお願いもしました。そして現在は、全船の主要箇所に抗菌・抗ウイルスコーティング加工なども行っています。

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船内の共用部には業務用の空気清浄機が至るところに設置され、船内は病院並の衛生環境がつくられている。

 一時はレストランのバイキングも弁当に切り替えましたが、お客様からはバイキングを望む声を多くいただき、感染予防策を施したうえで、いまは全船で再開しました。しかしながら、時間帯によってはレストラン・浴場とも混み合う時間帯がありますので、密にならないよう船内放送や看板でご案内し、対策をとっております。

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レストランはバイキング再開。アクリル板などの感染予防策が施されている。

 このようなお声をいただくようになったのも、お客様が戻ってきたからで、やはり「Go To」の影響が大きいでしょう。船内のスペースに余裕があることが、ひとつの売りになった側面もあります。

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レストランにはビニール手袋の自動装着機を設置。

――お客の志向も変わってきた、ということでしょうか?

 はい。いまは乗用車で利用されるお客様の比率が高まっています。直近の旅客数としては3~4割減でも、乗用車の台数としては1割減くらいです。ドア to ドアのクルマ移動に、フェリーを組み込む傾向があります。

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和室の相部屋「ツーリスト」には、新型コロナウイルスへの効果が認められた空気清浄機を設置。隣席と1-3人分のスペースを空け、対面にならぬよう配席している。

 お客様の年齢層としては、60代以上が減り、40~50代のクルマをお持ちの層が増えました。その次が20代から30代ですね。その背景として、「Go To」が自動車運賃も割引対象になるということも大きいでしょう。

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大型トラック乗務員のためのドライバーズルームも全船個室となっている。

――2021年はどのような年になるでしょうか?

 今後は、乗用車利用のパッケージ商品のプロモーションを考えていきます。当社は、フェリーにまず乗っていただき、リピーターを増やす目的で「弾丸フェリー」と呼ばれる日帰りの格安プランを打ち出してきましたが、いまは、もう少しゆったりした旅にしようという方もいらっしゃいます。そのためにも、フェリーは閉じこもった空間ではなく、デッキも広く、ゆったりしたものだというのを周知したいと思います。

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感染予防対策の手書きボードや、展望風呂の混雑状況表示。

 また船内の過ごし方についても、マーケティングも強化する構えです。現在、船内のイベントはすべて中止していますが、従来のように「何かイベントをやっているから楽しいだろう」ではなく、かゆいところに手が届くような施策を考えなければなりません。

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出航前のテープ投げ。2020年2月上旬撮影。こうしたイベントも全て休止している。

 当社は2022年、大阪~別府航路に日本初となるLNG(液化天然ガス)燃料のフェリーを就航させます。来年は、それに向けて満足度を高めるための予行演習のような年にもなるでしょう。

次はLNGフェリー 「はるかに静かでハイグレード」

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日本初となるLNG燃料のフェリー「さんふらわあ くれない/むらさき」。2022年から順次就航予定(画像:フェリーさんふらわあ)。

 LNG燃料船は、2022年末から2023年前半にかけ順次就航の予定で、大阪~別府航路の既存船「さんふらわあ あいぼり」「さんふらわあ こばると」を置き換えます。これにより環境への負荷は大幅に改善されるとのこと。

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LNG燃料フェリーのシングルルームのイメージ(画像:フェリーさんふらわあ)。

 また、LNG船はフェリーさんふらわあで最大級の船になるといいます。近年のフェリーは個室の増設など豪華志向が加速してきましたが、LNGフェリーはこれまでよりも「はるかに静かで、ハイグレード」(赤坂社長)になると胸を張ります。

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2タイプの部屋を行き来できる「コネクティングルーム」も想定されている(画像:フェリーさんふらわあ)。

「個室化を進めるとともに、2家族で一緒に過ごせるといった部屋のバリエーションも広げる予定です。大部屋は3部屋、定員で50人弱ほどになりますが、それもパーティションにより4区画で区切れるようにするなど、プライベート志向を強めます」(赤坂社長)

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「カジュアルクルーズ」をうたうフェリーさんふらわあは、他社よりも一般旅客の割合が多くコロナ禍は経営を直撃。それでも従来の傾向をさらに伸ばしていくという。

 こうした豪華志向が、フェリー全体のグレードアップにつながり、アフターコロナで強みになるとのこと。将来的には自社だけでなく、関西~九州の他航路とも連携し、リピーターを増やしマーケットを広げたいといいます。さらに豪華なクルーズ船に乗りたくなった人を、グループ会社の商船三井客船「にっぽん丸」へ誘導する、といったシナジーが生まれる可能性もあるとのことです。

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志布志行きフェリーの甲板から見る日の出。

 またいま、コロナ禍で外国人観光客が減ったことで、日本人による日本の再発見も進んでいると話します。「外国人がなぜ日本に来るのか、日本では当たり前の何気ない田園風景、海や山……これらに衝撃を覚えるからです。それをいま、自分たちで見ないままでは、もったいない」と赤坂社長は話します。

●「フェリーさんふらわあ」ウェブサイト
https://www.ferry-sunflower.co.jp/

【了】

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