「さんふらわあ」50年もなぜ続く? もとは客船のブランド名 「さんらいず」「さんせっと」だったかも?〈PR〉
カーフェリー厳冬期に芽生えた「カジュアルクルーズフェリー」
嵐のような経営統合が進められた時代、カーフェリーは厳冬期の真っただ中にあったと言っていいでしょう。
2009(平成21)年から始まった 高速道路料金割引(いわゆる高速1000円)の影響で、2010年の別府航路の利用客・車両は2005年比で6分の1にまで減少。リーマンショックによる景気の先行き懸念もあり、各社が生き残りを賭け、必死に模索を試みていました。
そうした真冬の日々のなか、将来に花開く萌芽もありました。
神戸〜大分航路へ2007(平成19)年から翌年にかけて就航した「さんふらわあ ごーるど/ぱーる」には、日本史上初めてウィズペットルームが設けられました。このペットとともに過ごせる客室は、いまや国内長距離フェリーのスタンダードになっています。
2017(平成29)年は、北海道航路へ商船三井フェリー初の自社船「さんふらわあ ふらの/さっぽろ」は、大胆な2層プロムナードが印象的です。翌年には志布志航路へ「さんふらわあ さつま/きりしま」が登場。日本初となるプロジェクションマッピングの演出や、バルコニー付きのキャビン導入など、本格的な“カジュアルクルーズ”を楽しめるフェリーとして大きな話題を呼びました。
カジュアルクルーズのパイオニア的なフェリーが次々登場する近年の「さんふらわあ」。それは1970年代の「さんふらわあ5姉妹」が目指した原点への回帰のようにも思えます。「さんふらあ」は再び、新たな船旅を提案し始めたのです。
国内初のLNG船も「さんふらわあ」から
2022年3月3日、フェリーさんふらわあ別府航路の新造船「さんふらわあ くれない」の命名・進水式が三菱重工業下関造船所で行われました。2023年1月にデビュー予定の新船は、かつて別府航路の黄金時代を演出した戦前の「紅丸」、1960年代の「くれない丸」といった伝統の船名を受け継いでいます。来年4月に登場する姉妹船「さんふらわあ むらさき」も同じくかつての栄光を担った船名「むらさき丸(紫丸)」を継承するものです。
しかし「さんふらわあ」の名を冠した新船は、そうしたノスタルジーとは別の顔も持ちます。これらは国内初の液化天然ガス(LNG)燃料フェリーだからです。
LNG燃料を活用することで、エンジンの振動と騒音も従来と比べて劇的に緩和され静粛性が高まり、快適性が向上。フェリーさんふらわあ船隊最大の約1万7300総トンの船で、より快適なカジュアルクルーズが実現します。
さらに商船三井フェリーも、2025年に新造LNG燃料フェリーを竣工することを発表しました。
日本のクルーズの嚆矢となった「さんふらわあ」の登場から半世紀。客船からカーフェリー、そしてカジュアルクルーズシップへと、そのブランドは色あせることなく引き継がれてきました。
そして50年の節目でLNG燃料フェリーが誕生します。国内フェリーの環境対応をリードする「新世代のさんふらわあ」です。50年から、さらに100年へ、「さんふらわあ」の名はさらに輝き続けるでしょう。
【了】
Writer: カナマルトモヨシ(航海作家)
1966年生まれ。日本のフェリーだけでなく外国航路や、中国・韓国の国内フェリーにも乗船経験が豊富な航海作家。商船三井のホームページ「カジュアルクルーズさんふらわあ」や雑誌「クルーズ」(海事プレス社)などに連載を持つ。