鉄道大好き女子「さんふらわあ」に乗る 東西2航路のフェリーで悟った「旅しながら暮らせる!」〈PR〉
日本の東西を結ぶ2つのフェリー「さんふらわあ」に鉄道大好き女子が乗船。鉄道派には豪華すぎる客室におののき、グルメ、入浴、船内イベントと、最新フェリーを楽しみ尽くしました。フェリーを旅に組み込む本質的なメリットは、これだけではないようです。
さんふらわあ「大阪~志布志」「大洗~苫小牧」乗り比べ
2022年2月に誕生50周年を迎えたフェリー「さんふらわあ」。現在は、商船三井フェリーが「大洗~苫小牧」、フェリーさんふらわあが「大阪~別府」「神戸~大分」「大阪~志布志」航路を運航しています。
同じブランドネームとはいえ、東日本と西日本では違いがあるはず!今回は、両社のフェリーを乗りくらべてみました。
鹿児島市街から「船に乗る路線バス」乗り継ぎで志布志へ
最初に乗船するのは、フェリーさんふらわあの「きりしま」です。乗船した日曜は、鹿児島県の志布志を17時に出港、翌朝7時40分に大阪へ入港します。
まずは飛行機で鹿児島空港へ。鹿児島市中心部、天文館で名物「しろくま」をいただいたのち、「垂水鴨池フェリー」に車両ごと乗り込む日本唯一の“船に乗る”路線バス「大隅半島直行バス」など、路線バスの旅を楽しみながら志布志駅に到着しました。海に向かって15分ほど歩くと、太陽のマークがあしらわれた「さんふらわあ きりしま」の船体が姿を現しました。
なお、行程がやや険しいのは個人的な趣味によるものです。鹿児島市内とターミナルを結ぶ高速シャトルバス「さんふらわあライナー」も運行しているので、ご自身の嗜好に合ったアクセス手段を選びましょう。
出港前からノックアウトされてしまった客室
16時、乗船開始のアナウンスに誘導され、タラップを進んでいきます。エレベーターで7階まで上がれば、正面には6~8階まで吹き抜けのアトリウム、両側は窓に沿ってソファが並んでいました。
客室の扉を開いたところで「ひえわっ!」と奇声に近い独り言。利用した「デラックス」は正面の窓を挟むようにベッドが一台ずつ、手前にはソファーセットがしつらえてあり、恐れ多いほどに贅沢空間だったためです。シャワー、温水便座の洋式トイレも完備。また、コンセントの口が6所も設けられており、2018年デビューしたばかりの「きりしま」は、「充電」を求め続ける現代人に寄り添ってくれていると感じました。
鉄道の旅であれば「駅弁は列車が動き出してから」のような不文律があるものの、「きりしま」では出港を前にして大浴場がオープン。行くしかありません。私事ですが「大浴場付きビジネスホテル」の「大浴場」があまりに小さく、芋の子状態になった経験があり警戒していましたが、まったくもって杞憂でした。洗い場は10以上あり、3つの浴槽のうち1つはジェットバス仕様ときています。24時間使えるシャワー室も併設です。
風呂上りは6階のショップへ。お土産やおつまみのほか、化粧落としをはじめとするスキンケアグッズ、それに生理用ナプキンも販売されており、万が一のときも安心です。私はここで御朱印のフェリー版「御船印」を入手。通常版、50周年限定版の2種類を購入しました。
出港の様子は展望デッキで見守ります。見送りに来られている方、それにターミナル職員の方が手を振り、呼応するように汽笛が鳴らされ、旅の始まりを感じました。
何度も訪れた選択「船内楽しむか、眠るか」
18時を過ぎたところで、6階のレストランへ。バイキング形式の夕食は、大分の郷土料理「だんご汁」やタコ焼き、さらに牛スジのおでんなど、西日本らしさ満点のラインナップです。デザートには3種類のケーキに加え、5月上旬の乗船であったことから、「子供の日」にちなんだ柏餅、笹巻ちまきが用意されていました。順番に盛り付けていき、最終的にお皿がお盆から溢れたそれを、窓に面したカウンター席でおいしくいただきました。
入浴、食事とやるべきことはやった感じがありますが、夜は終わりません。アトリウム天井を使ったプロジェクションマッピング、それにセルフ形式で参加できる「船内謎解きゲーム」とお楽しみが続くのです。
そうこうしているうちに21時を回り、消灯のアナウンス。もっとも船内が真っ暗になるわけではなく、共用スペースの一部が減灯される程度なので自由に動き回れます。「まだ早い時間だけれど、どうしよう……」。
揺れを感じながら横になっていところ眠りについてしまい、気づいたときには5時半、窓から陽光が差し込んでいました。7時40分の到着までは残り2時間弱ですが、6時には大浴場、それにレストランがオープンします。
「お風呂にする?ご飯にする?それとも二度寝?」 迷ったのち、朝食バイキングへ。夕食とはメニューがまったく異なり、さんふらわあのロゴをあしらわれたさつま揚げまでありました。
名残惜しくも7時半には下船に向けたアナウンスが流れます。大阪南港ターミナルが近付くと、一足先に入港していた別府発の「さんふらわあ こばると」も見えました。志布志航路の第2ターミナルは少し離れていますが、無料シャトルバスで第1ターミナルの入るアジア太平洋トレードセンター(ATC)まで移動できます。バスは、さんふらわあのマークがデザインされた「さつま」号でした。
「東のさんふらわあ」拠点の苫小牧に鉄旅スポット
続いて乗船するのは、商船三井フェリー「さんふらわあ ふらの」。“夕方便”は、苫小牧を18時45分に出港して、翌14時に茨城県の大洗に入港します。
まず降り立った新千歳空港でラーメン、牛乳、ソフトクリームと北海道グルメをいただき、さらに鉄分補給すべく、苫小牧駅前で1951年に廃止された王子製紙軽便鉄道の保存車両、および2017年に廃止された王子製紙苫小牧工場専用線跡を見学しました。苫小牧西港フェリーターミナルへは路線バスで向かいましたが、札幌駅前からターミナル行きの高速バスも運行しているのでご安心ください。
苫小牧のターミナルを一言でいうなら「圧巻」。八戸行きシルバーフェリー(川崎近海汽船)「シルバープリンセス」、仙台行きの太平洋フェリー「きたかみ」、そしてこれから乗る「さんふらわあ ふらの」と3隻もフェリーが並んでいたのです。乗船券を兼ねたカードキーを受け取ったあとは、17時30分に乗船案内のアナウンスが流れるまで、3階の苫小牧ポートミュージアム、展望デッキで時間を過ごしました。
マジか! フェリーの浴室で「整う」体験
「ふらの」で利用した客室「プレミアム」室内は、手前からツインベッド、ソファーベッド、そして専用バルコニーと続きます。お風呂は浴槽付きのユニットバスでした。とびっきりの贅沢に体がついていきません。アメニティには先日の「きりしま」と同じく、「さんふらわあ」の太陽マークがデザインされたフェイスタオルが用意されているのですが、「きりしま」の太陽マークは真っ赤であるのに対して、「ふらの」のそれは赤+オレンジと絶妙な違いが。収集癖を刺激します。
出港前のお清めのごとく展望浴場へ。浴室はサウナ付きです。2017年にデビューした「ふらの」は、最新の流行もしっかり押さえてくれています。
18時39分、汽笛の音に誘われてデッキに向かえば、静かに離岸しているところでした。およそ19時間の船旅が始まります。
6階の夕食バイキング会場は「アスパラフェア」の開催期間中でグラタンから天ぷらまで、富良野産の朝採れアスパラガスを使った料理がこれでもかというくらい用意されていました。あとはチキンレッグ、黒焼きそばと、パーティー風のメニューが続きます。お盆に載せきれません。
食後は5階のショップ探訪へ。USBケーブルや変換アダプタなどに加えて、男性用下着も並んでいました。身一つで乗船しても(きっと)どうにかなるでしょう。私はといえば、「御船印」の通常版、50周年限定版を入手。これで計4枚の印が集まったことになりますが、各社の航路がデザインされた限定版を横に並べてみればピッタリくっつき、一枚の日本地図が完成するではないですか。にくい演出です。
消灯のアナウンスが流れる21時25分、バルコニーにそっと出てみました。眼下は真っ暗な一方、空には星がまたたき、海の夜が広がっていました。
到着はお昼過ぎ 朝から連続「食リポ」
再び快眠し、時刻は早朝6時半。バルコニーの向こうに見える海面は、とろみのついた輝きを放っていました。
7時半にはこの日最初の放送が流れ、レストランがオープンした旨をアナウンス。うどん、パン、ごはんと潤沢な炭水化物に、和洋選び放題のおかず。全種類食べてしまいました。
プロムナードに配されたソファー席で、流れゆく景色をぼんやり眺めているうちに時間は過ぎ、11時半に。レストランで昼食の提供がはじまります。半ば食レポと化してきていますが、メニューはうどん、スムージー、ケーキセットとまるで軽食喫茶とオシャレカフェが同居しているかのような守備範囲の広さに感激。私はこれまでの食べ過ぎを反省し、ドリンク付きのチーズトーストを選びました。
やがて大洗のシンボル「大洗マリンタワー」が見え始め、13時45分、大洗港フェリーターミナルに到着。下船したのちは船首部分から次々出てくるトラックを見学、さらに大洗マリンタワーの展望室から「さんふらわあ ふらの」を俯瞰と大洗観光を楽しみました。一刻も早く帰宅したい人には、ターミナルと大洗駅を結ぶ路線バスが用意されています。鹿島臨海鉄道で水戸へ出れば、電車でも、高速バスでも東京へ直行できます。
移動しながら「生活」すべてを賄えるフェリー バイク乗りは知っている?
今回、2社のフェリーを立て続けに乗ることで感じたのは、睡眠、食事、入浴と、船内に滞在しているだけで「生活」がすべてこなせる魅力です。特に睡眠は、布団で横になれるため、下船後は体力満タンな状態からスタートできます。
加えて、なるべく荷物を少なくするために、旅先で「洗濯」をする習慣がある身にとって「きりしま」も「ふらの」もコインランドリーが設置されている点は大変助かりました。また、船内用Wi-Fiで楽しめる映画や、「きりしま」内での「謎解きゲーム」など。こなしきれないくらいのお楽しみも用意されています。
余談ですが、私がジーンズをはいていたせいか、船内で「バイクは何のってるの?」と尋ねられる一幕があり、「フェリーといえばバイク」の認識があることを知りました。
ふだん鉄道やバスなどで旅をしていると、駅や空港を軸に動くことになりますが、ここに「フェリーターミナル」が加わることで、より一層変化のついた行程が組めると、身をもって感じました。バイク乗りの皆さんに負けない勢いで、鉄道旅にもフェリーを積極導入したいところです。
【了】
Writer: 蜂谷あす美(旅の文筆家)
1988年、福井県出身。慶應義塾大学商学部卒業。出版社勤務を経て現在に至る。2015年1月にJR全線完乗。鉄道と旅と牛乳を中心とした随筆、紀行文で活躍。神奈川県在住。