2駅を使い乗り換える工夫 香港の地下鉄(MTR)「乗り換えで迷った」ほぼ聞かないワケ

香港の地下鉄(MTR)では、「乗り換えで迷った」という話をほとんど聞きません。その背景には、工夫された乗り換え方法があります。2駅を使って簡単に乗り換えられるようにもされています。

この記事の主な内容

・他路線との乗り換えは基本的に島式ホーム反対側に行くだけの香港
・エリート官僚養成で効率的な路線敷設計画を作成
・基本的に最大で2路線まで
・2つの駅を利用して手軽に乗り換えできるよう工夫された香港
・ほとんど聞いたことがない「乗り換えで迷った」

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他路線との乗り換えは基本的に島式ホーム反対側に行くだけの香港

 大都市圏、とくに東京と大阪の鉄道網は高度に発達しています。ただ、利便性を考慮した結果、路線網が複雑になり、乗り換えに迷ってしまうことがあります。当該地域に住んでいる人が迷うのですから、地方から来た人や外国人観光客が「迷子」になることは必然かもしれません。

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同じプラットホームに異なる路線が入ってくる香港(武田信晃撮影)。

 香港の地下鉄(MTR)では、島式プラットホームの反対側行けば乗り換えが自動的にできるように設計されています。

エリート官僚養成で効率的な路線敷設計画を作成

 よく渋谷駅が「迷宮」とか「ラビリンス」と表現されますが、それは揶揄的な意味もありますし、ある種の自慢にもなっているニュアンスも含まれています。JR、東京メトロ、東急、京王が乗り入れていることが迷宮化した大きな要因のひとつですが、これは政府からの鉄道事業の許可がいるとしても、資本主義で自由競争があるからこそなので、決してすべてが悪いことではありません。ただ、各鉄道会社の路線敷設計画や延伸、拡大計画についてどのように導いたり、認可したりしていくのかは、行政の手腕が問われてはいるでしょう。

 香港はイギリスの植民地でしたが、その昔は世界を支配した大英帝国ですから、植民地を開発していくノウハウを持っていました。香港の場合も、統治の脅威になりかねない高等教育には力をあまり入れませんでしたが、一部の香港人エリート官僚を養成するような教育制度を作りました。イギリスの大学評価機関であるクアクアレリ・シモンズ社による「QS世界大学ランキング2021」によると香港の最高学府、香港大学は22位で24位の東京大学を上回っているほどです。

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「鉄道」は香港市民の足(武田信晃撮影)。

 その彼らが、1960年代から綿密に路線敷設の計画を練ってきました。香港は土地が狭く、かつ人口密度が高く地価が高いため、駐車場代も高いです。維持費もかかりますから、自家用車の普及率が低いのです。つまり、鉄道は香港市民の大きな足なので、路線ひとつにしても市民が満足しなければ、不満がたまり植民地統治に支障が出かねないという背景もあります。

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Writer: 武田信晃

新聞記者、編集者として勤務した後、フリーランスのジャーナリストとして独立。香港と日本の政治・経済、社会などを中心取材するほか、国内外で行われているスポーツについても取材・執筆をしている。

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