衰退過程に入った「クルーズにっぽん」? 外国クルーズ船来航ブームの陰で伸び悩やむ日本船社

近年、東アジアにクルーズ船が増加していますが、日本のクルーズ船はその波に上手く乗れていないようです。その背景には日本特有の難しさがありました。

様々な制約がある日本のクルーズ会社

 2015年7月にひっそりと、24年間に渡って続けられていた政府規制が緩和されました。日本のクルーズ会社に課していた、30日間に一度は必ず海外の港に行かねばならないという、いわゆる「30日ルール」。それが「60日ルール」へ、延長が認められたのです。

 一昨年あたりから、日本近海へ海外の大型客船が大挙してやってくるようになり、東アジアはクルーズブームが来ているかに見えます。しかし日本船社によるクルーズは、いまひとつ盛り上がりに欠けています。

 その背景には、日本船社に対する“がんじがらめの規制”があるといわれています。外国船の登場で、ようやく規制緩和に乗り出した日本政府。しかし業界からもクルーズファンからも、「遅すぎるし、もっと徹底した緩和が欲しい」との声が聞かれます。

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日本のクルーズ会社に現在課せられている規制、行政指導(図表:乗りものニュース編集部作成)。

 日本のクルーズ会社に現在課せられている規制、行政指導は別表のとおりです。2013年秋、国土交通省は事業者団体の要望に従って、日本人に限定していた日本籍客船の運航要員のうち、下級船員(クルー)の国籍条項を改め、「日本人は船長、機関長などオフィサー(士官)だけでよい」とする規制緩和を実施しました。

 続いて実施した緩和策が、「30日ルール」の「60日ルール」への改定です。このルールは1991(平成3)年、それまで日本籍客船の乗組員は全て日本人とされていたものを、レストランウェイターやキャビン清掃スタッフなどサービス要員について、フィリピン人など外国人でも良いとした制度です。その際、いわばペナルティのような格好で導入されたのが「30日ルール」。貨物船などにあった外国人船員配乗の際の規定(丸シップ制度)を準用し、「対象船は30日間に一度海外に出なさい」とした義務を負わせたものです。

 日本船はいまでも世界一周など、1年間に30日から130日は海外クルーズに出ています。一方、日本クルーズが盛り上がる夏場は国内クルーズに専念したいのですが、それでも月に一度は釜山やウラジオストクなど海外の港に寄港させるというその制度。日本人船員だけが乗るフェリーなどの国内船との公平感を維持したい、という狙いもあるようです。

 しかし、この規定を満たす目的のためだけに、客を乗せず釜山など海外港にワンタッチ寄港するといった“無駄なスケジュール”を強いられるクルーズ船も出てくるという、笑えないエピソードもあります。このことは同時に燃料費の負担増や、不稼働損を日本船社に強いることにもなり、未だに続く日本人オフィサーの配乗義務と併せて、日本のクルーズ会社にとって大きなコスト負担を強いていました。

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