環境規制を「順風」に? すすむ船のLNG燃料化 横浜港から始まる次代の「世界戦略」
経験を活かした3段階の整備ロードマップ
LNG燃料の、船への供給について、日本郵船の担当者はさらに次のように説明します。
「LNG燃料船への燃料供給は、現状『Truck to Ship』という方法で行っています。これは陸上に停車したタンクローリーから、LNGの低温にも耐え得る仕様のホースを使用し、船舶へLNGを供給する方式です。LNGは高圧状態で保持することで低温の液体状態を維持しているため、重油供給時とは異なり、円滑にLNG供給を行なうことができるよう、タンクローリーと本船の双方にて燃料タンクの圧力管理が必要になります」
こうしたLNG燃料補給経験の蓄積からも、横浜港の選定は順当なものといえるでしょう。
では横浜港のLNGバンカリング整備について、どのようなロードマップを描いているのでしょうか。この点について検討会は、まず詳細な需要予測を立て、これに基づき3段階のフェイズを設定しました。
フェイズ1は先述の「Truck to Ship」方式です。現在「魁」に対し行っている方式で、さらなる効率化を検討しているものの、そのほかの課題は特に挙げられていません。
フェイズ2は「Ship to Ship」、すなわちLNGタンクローリーの代わりに「LNGバンカリング船」を使用した、海上で燃料供給を行う方式です。もちろんLNGバンカリング船の導入が必要になりますが、補給を受ける船は桟橋やふ頭への接岸が不要になるため、急な需要増への対応や、大型船への燃料供給に適した方式といえるでしょう。
実現にあたっては、横浜港のLNG基地が(船舶向け)出荷用の機能を備えていないため、袖ヶ浦の基地を改修しそこからLNGバンカリング船を出すことを想定しています。費用見積もりは約60億円で、2020年からの開始を予定しています。前出の松良室長は「(既存の)LNG基地に小規模な改修を行って出荷用設備を整備するとともに、LNGバンカリング船を建造することで」速やかに実現が可能といいます。
ただし、フェイズ2の方法では年間30万トンから40万トン程度の供給が限界とも。この規模に達したら、横浜港内のLNG基地も活用するフェイズ3へと移行します。根岸、扇島の両基地は現状、いずれも(船舶向け)LNG出荷用の機能を備えていないため、出荷用桟橋や配管設備の新設といった改修が必要になり、バンカリング船についても対応できる供給量を超えるため、2隻目以降を投入する必要があります。これらの整備費用などに、およそ100億円を見積もります。
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