「鉄道写真家」のビジネスモデル・日々の生活とは どんな写真が売れるのか?

なかなか身近にはいないであろう、鉄道の撮影をなりわいにする「鉄道写真家」。どんな形で、鉄道の写真が売上になるのでしょうか。またその生活は、どんな毎日なのでしょうか。ネット時代、以前と状況が変わっていることもあるようです。

「鉄道写真家」の仕事 まずひとつ目は「撮り下ろし」

 みなさんこんにちは! 鉄道写真家の村上悠太です。今回は、僕の仕事である「鉄道写真家」という職業について、少しお話ししてみたいなと思います。

 鉄道写真家の仕事は、大きく分けてふたつあります。ひとつは、出版社などのクライアントさんに依頼をいただいて撮影を行う「撮り下ろし」の仕事です。媒体は雑誌やウェブ、広告物など多岐にわたりますが、クライアントさんの意向に沿って、それに応えられる写真を撮影、提供するのが必須条件です。

Large 200610 photographer 01

拡大画像

1987年、鉄道発祥の地である新橋で生まれのJRと同い年の鉄道写真家。鉄道は撮るのはもちろん、乗るのも大好きで、旅をしながら写真を撮るのがライフワーク。

 ただ、単純に撮影するのではなく、ここで僕が心がけていることがひとつあります。それは、要望のカットを撮影しつつ、その合間に「こんな感じはいかがでしょうか?」という提案カットを入れ込むということです。そうすることで最初の案よりさらに結果が良いものになればいいですし、僕らしい写真がページの中で採用されるのは、とても大きなやりがいを感じます。一方で、全体のコンセプトとはかけ離れた過度な自己主張はマイナスになることもあります。

目指したい「写真を撮るだけじゃない写真家」

 最近では、鉄道専門ではない媒体でも鉄道特集を企画されることも多くなり、企画段階からご相談を受けることも増えてきました。その場合は自分が持っている鉄道への知識をわかりやすく説明しながら、コミュニケーションを取り、監修業務を行うこともあります。

 僕は撮影が本業ではありますが、この記事のように原稿を書くことも非常に多いです。いまはライターさんが写真を撮ることも、写真家が原稿を書くこともごく普通で、そのほうが取材なども1人で行えることから、クライアントさんに喜ばれることも多くあります。

Large 200610 photographer 02

拡大画像

JR東海のN700S J0編成。自身が執筆する記事などでも活用するため、話題の新型車両もなるべく早い段階で用意しておく(村上悠太撮影)。

「写真家は写真だけに集中すべき」という方もいますが、僕は全くそう思いません。業務面でもできることが多いのは自身のセールスポイントになりますし、写真と文章のコンビネーションで表現できる世界はかなりあると感じています。なお、雑誌の場合は原稿に対して〇〇円、写真に対して〇〇円という計算方法や、ページ数で〇〇円というふうにギャランティーが決められていることがほとんどです。

「鉄道写真家」の仕事 ふたつ目は「ストックフォト」

 続いて、もうひとつの仕事はあらかじめ写真を撮っておいて、それを貸し出す「ストックフォト」という業務です。そのレンタル料が僕の収入になります。ここでいう「レンタル」というのは、あくまでも写真の著作権などは譲渡せず、使用ごとに料金が発生するという意味があります。

「夏の鉄道旅行特集!」といった企画を雑誌で組もうとすると、当たり前ですがシーズン前には発売する必要があります。そのため、誌面にはあらかじめ過去に撮影しておいた写真を掲載するわけですが、そこで登場するのがストックフォトです。

Large 200610 photographer 03

拡大画像

撮影したストックは、このような感じにフォルダ分けして管理している。

 ストックフォトは多ければ多いほど、様々な需要に対応できてベターですが、僕のようにフリーランスかつ、1人で仕事をしていると、やはり品揃えには限界があります。特に僕は2017年にそれまで勤めていた写真事務所から独立したため、まだ3年分のストックしか手元にありません。

 事務所勤務時代の写真は、いくら自分で撮ったとはいえ、業務で撮影したものについては僕のものではありません。そのため、独立直後はしばらく四季を写し込んだストックは、物理的に注文に応えることができませんでした。また、「北斗星」などのブルートレインについても撮影したことは何度もありますが、趣味で撮影したものを除き手元には残っていません。

どんな鉄道写真が売れるのか?

残り2081文字

この続きは有料会員登録をすると読むことができます。

2週間無料で登録する

Writer: 村上悠太(鉄道写真家)

1987年生まれでJRと同い年、鉄道発祥の地新橋生まれの鉄道写真家。車両はもちろん、鉄道に関わる様々な世界にレンズを向ける。元々乗り鉄なので、車でロケに出かけても時間ができれば車をおいてカメラといっしょに列車旅を楽しんでいる。日本鉄道写真作家協会会員、キヤノンEOS学園講師。

最新記事