近鉄の新型特急「ひのとり」に乗ってみた「気兼ねなくリクライニング」に一喜一憂の旅
近鉄の新特急列車「ひのとり」先頭車プレミアム車両に、大阪難波から近鉄名古屋まで乗車。車内にコーヒーマシンがあったり、それでちょっとしたトラブルがあったり、車内放送が楽しかったり、気兼ねなくリクライニングに一喜一憂したり。
近鉄特急「ひのとり」 独特の文化にニヤリ
近鉄が2020年3月、新たに名阪特急で運転を開始した列車「ひのとり」。デビューから約3か月が過ぎた2020年6月の土曜日、大阪難波から近鉄名古屋まで、その旅を体験しました。
乗車したのは、大阪難波発16時00分の「ひのとり」16列車。長らく国鉄・JR沿線で暮らしてきた私は、「16号」じゃないところに心が躍ります。
席は近鉄名古屋方の先頭1号車、プレミアム車両です。定員21名のうち、6割ほどの乗車率だったでしょうか。そして、その3分の1強ぐらいが鉄道ファンらしき人たち。“ポイント”で写真を撮っていたりするので、なんとなく同類として通じ合えるものです。
「特急『ひのとり』016(ゼロイチロク)列車です」
そんな肉声の車内放送にニヤニヤしながら、特急「ひのとり」80000系電車は動き出します。
車内放送といえば、自動放送でも肉声放送でも、全座席がバックシェルタイプで、気兼ねなくリクライニングできることを伝えていたのが印象的でした。
「鶴橋を出ますと…」 近鉄特急のロマン
母子連れがスマホでこの「ひのとり」の写真を撮っていた大阪上本町を発車したのち、また車内放送にワクワクします。
「次の鶴橋を出ますと、津まで停まりません」
長い区間を停まらないというのは、ロマンがあります。もっとも、昔は鶴橋から近鉄名古屋まで停まりませんでしたし、新幹線「のぞみ」のほうが……ですが、無粋なことはさておき。
地下区間から出て、ホーンを鳴らしながら鶴橋へ到着。
「喫煙室を使用できない区間を過ぎました」
そんな独特の車内放送にまたも心を奪われていると、大阪平野の東にそびえる生駒山地が、雨粒の流れる窓の向こうでだんだんとハッキリ、大きくなっていきました。
床に… 近鉄特急「ひのとり」 その良さの裏とその裏の良さ
レギュラー車両でもJRのグリーン車並みというハイグレードさ、充実した設備が魅力の新たな近鉄特急「ひのとり」。プレミアム車両のデッキ付近には、カップコーヒーと菓子類の販売機が用意された「カフェスポット」があります。
フラフラと車内見学に向かった際、そこで見つけました。床へチョロッとこぼれていたコーヒー。そして、カップコーヒーは美味しいけど、確かにこの危険はあるよな……と思いつつ別の車両をフラフラしたのち、そこへ戻ってきたのですが、見てしまいました。
通りがかった車掌が、床を拭いていました。「ひのとり」はハード面のみならず、ソフト面も良いようです。
またコーヒーといえば、プレミアム車両の座席にあるカップホルダー。肘掛け付近にすっぽりカップがはまるようになっていて、安心さと一定の使いやすさを両立しているのに感心しました。
近鉄特急「ひのとり」 津で見えなくなる 「気兼ねなくリクライニング」に助けられたが
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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。