ある意味“奇跡”の映画なのか!?『シベリア超特急』30周年! カルト的人気の理由とは? 衝撃のオチは『シックス・センス』超え!?

かつて映画解説者として人気だった映画評論家の水野晴郎さんが、映画監督兼主演で移動んだ『シベリア超特急』とは?

ついにシベリア超特急誕生から30年!

  いまから約30年前の1996年2月24日、かつて『金曜ロードショー』(日本テレビ系)の映画解説者として人気を博した映画評論家・水野晴郎さんが、マイク・ミズノ監督として自らメガホンを取った作品『シベリア超特急』が公開されました。

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『シベリア超特急』DVD特別編集版のジャケットデザイン

 本作はその後シリーズ化され、舞台化も実現。映画5作、舞台2作の計7作品が制作されています。ただ、面白いかと問われれば、“訓練された”カルト的な強火ファン以外は口をつぐんでしまうでしょう。

 はっきり申し上げれば、本作は出来が良くないどころか、確実に「出来の悪い部類」に入ります。

 あえて口汚く言うならば、いわゆる“クソ映画”です。しかし、本作は凡百の「駄作」「クソ映画」と一括りにできる作品ではありません。2000年代以降、実写版『デビルマン』などこのジャンルに強烈な作品が登場したことで相対的に目立たなくなりましたが、かつては1982年公開の『幻の湖』、1996年公開の『北京原人 Who are you?』と並び、「日本三大クソ映画」「三大クソ邦画」とまで称されていました。

 その中でも本作は、三作すべてを鑑賞した身からすると、眠気を誘う『北京原人 Who are you?』や、終始何が起きているのか分からない『幻の湖』とは明確に異なります。どこか魔力めいたものを持ち、理由は説明できないのに惹きつけられてしまう——いわば“神がかったクソ映画”なのです。

 その特異な魅力は、ほかの二作とは違い、後年に熱狂的なファンを獲得したことからも明らかでしょう。

 まず本作を楽しむために大切なのは、細部に目をつぶることです。とにかく粗が目につきます。しかし、全体の展開として捉えれば、飽きさせない構成にはなっており、大枠では成立しています。

 物語の舞台は第二次世界大戦まっただ中の1941年。独ソ戦開始直前、ソ連領から満州国へ向かうシベリア超特急の車内です。一等車両で次々と殺人事件が発生し、それを水野氏演じる山下奉文陸軍大将が解決していくという筋立てになっています。推理描写に関しては、列車という限られた空間をうまく活用しています。

 ただし、この“うまく活用できている”理由は明確です。全体としてアルフレッド・ヒチコック監督のサスペンス映画を強く参照しているからです。というより、移動型密室という設定からして、ヒッチコックの『バルカン超特急』と重なる部分が非常に多い。車内で突然人物が消える展開などは、そっくりと言っていいでしょう。

 本作の公開は1996年。戦前から活躍していた監督の古典的演出を、90年代半ばにそのまま持ち込む姿勢は、ある意味で恐れ知らずであり、同時に清々しくもあります。映画に詳しくない観客にとっては、逆に一周回って斬新に映る可能性すらあるでしょう。

 しかも、それらの“コテコテ演出”をほぼトレースする形で取り入れており、変に現代風へアレンジしない。この一点が、かえって作品の“ダメさ”を中和しているのが興味深いところです。もちろん、役者が瞬間移動しているかのように見える杜撰な演出も散見されますが……。

 しかしそれもまた、水野氏が敬愛する偉大な監督へのリスペクトゆえの選択だったのでしょう。下手に自分流へ改変しなかったことが、結果的に独特の味わいを生んでいるのです。

【画像】「イエスかノーか」これが映画のモデルになった山下奉文中将(当時)が降伏を迫る様子です

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