鉄道写真家の「ジレンマ」 求められる写真 怖かった自由 そして「自分の写真」とは
好きなものを撮るとしても、好きに撮れるわけではない鉄道写真家の仕事。そうした仕事におけるジレンマを、鉄道写真家の村上悠太さんはどうしているのでしょうか。逆に「自分らしさ」をしっかり持つことが重要なのかもしれません。
よく写真家同士でする話
こんにちは。鉄道写真家の村上悠太です! 今回で3回目の記事となりますが、SNSなどでいろいろな反響をいただき、うれしく思っています。今回は「鉄道写真家のジレンマ」というテーマでお話をしていきたいなと思っています。
「本当はこっちが僕のイチオシだったのに、それじゃなくてこっちが使われちゃったんだよねぇ」
よく写真家同士で、こんな話をすることがあります。仕事で写真に関わっていると、編集さんなど自分以外の「視点」が入ったり、諸所の都合などにより撮影者のイチオシ以外のカットがメインに使われて、撮影者が不満に思ったりすることがまま起きます。
ほかにも「本当はこう撮りたいのに、こっちのほうが使われそうだから」と、自分のセンスで「最もよい!」と考えた以外の構図で撮影することがあります。
いま挙げた2例のうち、後者はプロとしての仕事と考えることもできますが、前者については自ら納品しているとはいえ、自分のベストのカットが使われるわけではないですから、確かにジレンマに感じることもあります。
会社員からフリーランスになった理由
一方で、このテーマで執筆するにあたって、駆け出しからしばらくのあいだ感じていた、先述のような「ジレンマ」が最近なくなってきたことに気づきました。前回お話したとおり、僕はレイルマンフォトオフィスに入社することでプロとしてのキャリアをスタートしました。当時は会社員でしたからお給料をいただいている以上、まずは会社の仕事や利益になる撮影、業務を行う必要があります。
幸い、会社員時代もかなり自由に撮影をさせていただいたこともあり、自分の写真と向き合う時間もしっかりとあったのはとても幸せでしたが、そんななかでも在籍を続けていくうちに、自分の心のうちに「こうした鉄道をモチーフにした写真を撮っていきたい」という思いが強くなり、7年の在籍を経てレイルマンフォトオフィスを退社し、現在のフリーランスという道を選びました。レイルマン時代も自由がたくさんあったのですが、よりもっと自分の写真を自由に追求するため、フリーという道を選択したというわけです。
フリーになって以来は、基本的に誰かに管理されているわけではないので、好きな時に好きな場所で好きなだけ集中して撮影に取り組むことができるようになりました。もちろん、「コスト」や家族に小さな子どもがいるので、「家庭」ということに最大限配慮しながらではありますが……。
こんな形が多い仕事の依頼
残り3083文字
この続きは有料会員登録をすると読むことができます。
Writer: 村上悠太(鉄道写真家)
1987年生まれでJRと同い年、鉄道発祥の地新橋生まれの鉄道写真家。車両はもちろん、鉄道に関わる様々な世界にレンズを向ける。元々乗り鉄なので、車でロケに出かけても時間ができれば車をおいてカメラといっしょに列車旅を楽しんでいる。日本鉄道写真作家協会会員、キヤノンEOS学園講師。
コメント