「鉄道写真家」という仕事の現場 「独特の作法」もある世界 あえて選択する全車中泊
様々な場面がある鉄道写真家の仕事現場。「あえての全車中泊」がやりやすかったり、「独特の作法」が存在する現場があったり……。そこで「鉄道写真のプロ」としての仕事をすべく、いろいろな工夫、行動をしています。
撮影機材は… 近年は動画の需要も高まる
今回で4回目の掲載となりました。鉄道写真家の村上悠太です。もうしばらくだけ、僕の話にお付き合いいただければ幸いです。今回は、撮影現場でのエピソードや機材などの話をしたいと思います。
最初に機材の話から始めましょう。現在、僕が使っているカメラは100%がデジタルカメラです。フィルムから写真を始めましたが、いまでは全てデジタルで撮影しています。大学時代、完全にデジタルへ移行しました。
カメラとしては、キヤノンのミラーレスカメラEOS Rシリーズと、小型なEOS kiss Mを愛用しています。ミラーレスカメラは液晶ビューファインダーを搭載し、写真の仕上がりをリアルタイムで確認できますが、これがスナップ感覚でどんどん写真を撮影していく僕のスタイルには非常にマッチしています。
また、動画も写真と同じ機材でそのまま撮っています。4Kの撮影がほとんどなので、データ容量が大きく保存は大変ですが、動画の需要も高まってきており、技術、知識面でも動画の強化を行っています。
鉄道写真家にとって、カメラと並んで必需品である「クルマ」
そして、カメラと並んで必需品なのが「クルマ」です。鉄道を撮るのにクルマに乗るのか、と思われますが、どうしても三脚、脚立など大型の機材や、撮影地までのアクセスを考えると、クルマを利用せざるを得ないことが多々あります。
日本全国、あらゆるところまでクルマで行きますが、そんなクルマはいわば「走る自宅」です。シビアな仕事ほど、ロケの延長や思い切った大移動などにも柔軟に対応できる自分のクルマのほうが撮影に集中できるので、クルマで行くことが多いです。
乗っているのはダイハツの「アトレー7」という車種で、レイルマンフォトオフィスの社員時代から3台続けて同じ車種を乗り継いできました。
ロケ中「基本的に全て車中泊」にしているワケ
ロケ中は、基本的に全て車中泊をして過ごします。「え、ホテル代も出してくれない仕事なの!?」と心配してくれる方もいらっしゃいますが、そんなことはなく、自ら車中泊を選んでいます。
理由としては、ロケ地の近くにホテルがあるとも限りませんし、さらに始発列車から撮影を開始することがほとんどですので、ホテルに泊まるほうが手間に感じることが多いのです。
車中泊も「仮眠」では日中の撮影に影響が出るので、しっかりと寝られるようにマットなどを積んで居住性を高めています。2、3日ロケに出ると、滞在していた路線の始発列車に生活リズムが合うので、帰宅後もしばらく、その路線の始発列車に合わせて目が覚めます。
いろいろな撮影業務 やっぱり特にワクワクするのは…
続いて、撮影現場のご紹介をしていきましょう。日々、いろいろな撮影業務があるなか、特にワクワクするのはやはり鉄道の現場にお邪魔して行う取材や、新型車両などの報道公開です。通常ではなかなか見られなかったり、入れない現場にお邪魔することができるのはやっぱり楽しいですし、この「楽しい」や「ワクワク」という感情を下手に隠したりしたくないなと最近、強く思っています。だって、鉄道が大好きなのは事実ですし、背伸びしてジャーナリスト気取りをしても僕らしくないですから。
ただ、そこで取材させてもらった貴重な写真やコメントなどをきちんと記事や誌面、ときには自分のSNSを通じてひとつの発信にまとめ、1人でも多くの人へ伝える責務が仕事としてありますから、単純に「自分が楽しかったからOK!」では全く意味をなしません。そこはきちんと分別し、社会人、そしてプロとして、仕事はきっちりと行っていきたいと思っています。
「独特の作法」がある鉄道の報道公開現場 怒られたこともありましたが
様々な取材のなか、ほかの多くのメディアさんと一緒に取材する「報道公開」は、駆け出しの頃、「独特の作法」がわからず、他メディアの人に怒られることもありましたが、指摘を受けながら動き方を学びました。
たとえば、新型車両の報道公開の場合、話題の車両ともなると何十社ものメディアさんが取材に駆けつけます。鉄道会社の広報さんの指示に従いつつ、案内されたとおりに撮影を進めていくのですが、外観についてはその列車のデビュー後に走行写真を撮影することができますが、「誰もいない車内の見通し写真」というのが特に大事で、さらにはほかのメディアさんと息を合わせて撮影しないと、ちょっと大変なことになります。
残り2760文字
この続きは有料会員登録をすると読むことができます。
Writer: 村上悠太(鉄道写真家)
1987年生まれでJRと同い年、鉄道発祥の地新橋生まれの鉄道写真家。車両はもちろん、鉄道に関わる様々な世界にレンズを向ける。元々乗り鉄なので、車でロケに出かけても時間ができれば車をおいてカメラといっしょに列車旅を楽しんでいる。日本鉄道写真作家協会会員、キヤノンEOS学園講師。