〈PR〉高齢化社会にこそ福祉車両を トヨタ「ウェルキャブ」が実践するクルマ作りとは

トヨタの福祉車両「ウェルキャブ」シリーズは高齢化社会に向け、どのようなクルマ作りをしているのでしょうか。同シリーズの製品企画主査に話を聞きました。

福祉車両は高齢者にも ところがその使用率は…?

「福祉車両」と聞くと、どんなクルマを思い浮かべるでしょうか。「障がい者が使えるように改造したクルマ」というイメージが、最初にくるかもしれません。でも、それは福祉車両のごく一部の姿でしかありません。外出に支障がある障がい者、そして、高齢者の可能性を広げるクルマ、それが「福祉車両」なのです。

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トヨタのウェルキャブシリーズは、写真の「ヴォクシー」はじめ全26車種をラインナップする(2017年9月27日、佐藤正勝撮影)。

 近年、日本の少子高齢化問題はますます深刻化し、現在、日本の高齢化率は28%となっています。4人に1人が75歳以上という、まさに世界一の「超高齢社会」。そんななか、「日本の高齢化問題に、真正面から取り組みます!」と頼もしく声を上げる企業があります。それは、トヨタ自動車。同社で「ウェルキャブ(福祉車両)」の製品企画を手がける中川 茂主査に話を聞きました。

 トヨタは、福祉車両の分野において、国内自動車メーカー最多の車種と仕様・タイプを揃えています。ラインナップは、「ヴィッツ」から「プリウス」、「ノア」、「ハイエース」まで26車種。人気モデルを多数扱い、全国シェアは約70%を誇る、名実ともにリーディング・カンパニーです。

 ひと口に「ウェルキャブ」と言っても、「自分で運転するタイプ」「助手席や後部座先への乗り降りをサポートしてくれるタイプ」「車いすごと乗り込めるタイプ」など、機能はさまざま。リモコン操作でシートが車外に出てきたり、スイッチひとつで折り畳んだ車いすを持ち上げて車内に収納してくれたり、素人目に見ても「どれも便利そう!」というものばかりです。

 しかし、普及率でいうと、足腰の不自由な障がい者(肢体不自由者)全体の約10%が福祉車両を使用しているというトヨタの推定がある一方で、足腰の不自由な高齢者の福祉車両使用率はわずか1%に留まっているのだとか。それは、なぜでしょうか。

高齢者への福祉車両はなぜ普及しない?

 高齢者の福祉車両使用率が極端に低いのには、ふたつの大きな理由があるとトヨタの中川さんは考えているそうです。

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トヨタ CVカンパニー製品企画 主査の中川茂さん(2017年9月27日、佐藤正勝撮影)。

「まずは、『外出の必要性』です。障がい者の場合、『毎日学校に通う』ですとか、『会社に行かなければならない』といった、強い目的が日常的にあります。一方で、高齢者にはそれがないですよね」

 確かに、外出が困難になった高齢者には、家族としても「危ないし、無理してまで出掛けなくても」という気持ちが働きます。せいぜい病院に連れて行くくらい。あとは家にいてもらって用事は代わりに済ませるといったような、一見親切な配慮も、高齢者の行動範囲をどんどん狭めることとなります。

「もうひとつは『使用期間』です。障がい者の場合、福祉車両の使用はずっと続くものですが、高齢者はそうとも限らない。例えば、3年後、5年後には、もうその車両は必要なくなっているかもしれません」

 そうすると、「我が家にウェルキャブは、本当に必要?」という気持ちになってしまうのは、無理もないことなのかもしれません。

普及のために、まずは経済的負担の解消!

 そこでトヨタは、これまでのウェルキャブをブラッシュアップし、更に使いやすくすることで、利用者の「経済的負担」までも解消することに挑戦しました。

 たとえば、新しくなった「ヴォクシー」のサイドリフトアップチルトシート車。後部左側の座席が回転しながら車外に出て乗降を助けてくれる機能は、旧モデルと同様です。違うのは、その「出具合い」。シートが半分だけ外に出て、しかも立ち上がりやすいように身体を送り出す角度に傾く(チルトする)のです。ヒップポイントがこれまでより15cm高くなり、足や腰にあまり負担をかけずに立ち上がることが出来ます。シートの「出具合い」とあいまって、これまでクルマの横に1.1m必要だったスペースが、55cmですむのです。

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従来品(左)との比較。新しいサイドリフトアップチルトシートは、尻の位置が高くなり、また前傾することで地面への足つき性も良好である。
従来品(左)との比較。新しいサイドリフトアップチルトシートは、尻の位置が高くなり、また前傾することで地面への足つき性も良好である。
クルマの横に必要なスペースも従来比約55cm減。

「1.1mのスペースが必要となると、クルマの購入にともなってガレージも改造しないといけない場合が出てきます。すると、『そこまでのお金はかけられない』となってしまう。でも、55cmなら、従来のガレージのままで使用できる場合が多くなり、購入へのハードルは低くなります」(中川さん)

 しかもこの幅なら、雨のなかでも、シートから立ち上がった人、傘を指しかける介護者、そして収納されるシートまでひとつの傘に収まります。日々のちょっとした不便にも、細やかに目を向けた改良となっているのです。

 ほかにも、車いすを乗せる必要がない場合にも使いやすいように荷室を工夫するなど「ふつうのクルマ」としての使いやすさに目を向けたり、新車開発の段階からウェルキャブ仕様を組み込んだ設計にしたりと、価格をおさえる努力もしています。従来、改造するぶん時間のかかった納車も、格段に速くなったそうです。

操作の負担も解消!

 世界的には高齢者は65歳以上ですが、ここで言う「高齢者」は、75歳以上という基準で定義されています。では、介護する側はどうでしょう。なんと、現在の日本では、介護者の69%が60歳代以上というデータがあります。しかも、介護者全体の69%は女性。つまり、介護を担っているのは「高齢の女性」ということなのです。

 ウェルキャブにいくら便利な機能があっても、どんなに安全性が高くても、使いこなせなかったら意味がありません。中川さんは次のように話します。

「これまで、車いすを自動車に乗せる場合、4点フックで固定するのが普通でした。そこに、誰も疑問を持たずにきたのです。しかも、シートベルトはスポークのあいだを通して止めなければならない。狭い車内で、それは介護者に大変な負担です」

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トヨタの車いす「ウェルチェア」。底面に固定用のアンカーバーを備える。
「ウェルチェア」に対応したクルマのフロア側のフック。
「ウェルチェア」をクルマに固定した様子。

 そこでトヨタは、車いすから改良を試みました。トヨタの車いす「電動ウェルチェア」には、底面に「アンカーバー」が備えられています。車いすごと乗車した際、このアンカーバーがクルマのフロアにあるフックにしっかりとはまって、固定することができるのです。操作はワンタッチでごくシンプル。しかも、ウェルチェアならシートベルトはスポークを通さず、車輪の上から装着することが可能と、煩雑な操作と力仕事に不安を覚える介護者の、強い味方となっています。

「車いすには決まった規格がないのですが、もしこのアンカーバーが共通規格となれば、電車やバスでもこの方式で固定できます。さらに言うと、ベビーカーにも応用可能ですよね」(中川さん)

 アンカーバーの共通規格が実現すれば、ウェルチェアを通して、日本の福祉が一歩前進するかもしれません。

若年世代の負担をも解消?

 現在、路線バスの、実に71%が赤字経営だといいます。毎年約1万kmのペースで、路線バスの廃止が進んでいるのです。自分でクルマを運転しない高齢者にとって、移動手段がどんどん失われているのが現状です。各自治体は公営バスを走らせたり、乗り合いタクシーのような事業形態を取ったりといった努力をしていますが、そこで負担になるのが「ドライバーの人件費」。そのため、高齢者をボランティア・ドライバーとして採用する例が見られています。

「65歳から74歳までの元気な前期高齢者に、いかに支える側に参加してもらうか。それが、現役世代の負担軽減に繋がります。そのための環境作りを、クルマの面から提供できたらと思うのです」(中川さん)

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2列目シートをたたまなくても3列目から乗降できるシート配列の例。乗降しやすいよう、白い手すりが備えられている(2017年9月27日、佐藤正勝撮影)。

 新しい「ノア」は、2列目シートを移動させなくても3列目の人が乗降出来るように通路を確保し、手すりも装着しました。

「これまでのように、ドライバーがいちいちクルマから降りてシートを操作する必要がないため、運転席からリモコンでドアを開けるだけですみます。シートの移動操作は両手を使用するため、雨の日には傘もさせずに作業していたドライバーの負担が、ぐっと軽減されるわけです」(中川さん)

 今後さらに、介護者側も高齢者になっていくなかで、利便性を求める視点が変わってきているのを感じる改良です。さらに、これなら乗降のための停車時間が短くなるので、後続のクルマへの影響も少なくなります。今後増えるであろう福祉車両が社会的に受け入れられやすい環境にするため、必要な配慮だといえます。

触れればわかる創意工夫、結果は「おのずとついてくる」

「ウェルキャブ開発が天職」と笑顔を見せる中川さんの視線は、温かく、とても細やかなものでした。

「たとえば、スライド式スロープに小石が絡むと、動かなくなってしまいます。都心部ではあまりないですが、寒冷地ではすべり防止のため、横断歩道などに焼き砂と呼ばれる小石を撒くのです。それが靴裏につき、スロープ上に落ちることで、そうしたトラブルが起こります。ウェルキャブのスロープは、畳んだときに小石が排出できるスペースを作ることでそれを解消しました。北海道の介護タクシーなどで、お客様のところに着いたもののスロープが開かない、などとなったら大変ですから」(中川さん)

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スロープは畳んだ時に小石が排出できるような工夫がなされている(2017年9月27日、佐藤正勝撮影)

 使った人にしかわからないけれども、あるとないとでは大違いの細かい工夫が随所に施されたウェルキャブ。トヨタの2016年における自動車登録・届出台数は、141万1478台(乗用車のみ)ですが、そのうちウェルキャブは約1万6000台に過ぎません。ここまでの創意工夫は、採算に繋がるのでしょうか。

「繋がればいいのですが、まずはいま、外出に負担を感じている方に、少しでも外出の機会を増やしていただきたい。数値の目標はありませんが、足腰の不自由な高齢者約500万人に対して普及率が1%というのは、あまりに低すぎます。ウェルキャブの良さを知っていただくことで、満足の笑顔とともに、結果はおのずとついてくると考えています」(中川さん)

「ウェルキャブは、これからの日本を支える商品になってほしい」という中川さん。「おもてなし」という言葉が出てくるくらい、細やかで創意工夫に溢れたウェルキャブは、日本の文化と感じます。近々に必要になるかどうかにかかわらず、ぜひ一度、実際に触れてみてください。

【了】

「トヨタ ウェルキャブ」について詳しくはこちら
http://toyota.jp/welcab/

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Writer: 大西紀江(ライター/編集者)

静岡・伊豆出身のライター、編集者。乗りものオタクの総本山ともいうべき某出版社の編集を経て、フリーランスに。以来、自動車を中心に模型から時計まで、幅広く執筆&編集を手掛ける。象の調教師の免許あり。

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