「個展」は「ライブ」のようなもの 写真は「プリント」で 鉄道写真家がそう思う理由
写真の「個展」とはなんなのか、何を考えて行い、そこにどんな意味があるのか――。「キヤノンギャラリー銀座」で個展開催中の村上悠太さんが語ります。やはり写真は「プリント」で仕上がると考えているそうです。
この記事の目次
・東京銀座と大阪で個展「つなぐ旅-その、日々へ-」をします!
・なぜ写真家は「個展」をひらくのか?
・個展は「ライブ」のようなもの
・ご来場されるいろいろな方々
・写真の仕上げは「プリント」だと思う理由
・オンライン配信も考えたが一瞬だった
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東京銀座と大阪で個展「つなぐ旅-その、日々へ-」をします!
みなさんこんにちは! 鉄道写真家の村上悠太です。
これまで僕の撮影内容や、どんな思いで撮影しているかというお話をさせていただきましたが、そうして撮影してきた写真を現在、「キヤノンギャラリー銀座」で2020年9月30日(水)まで、「キヤノンギャラリー大阪」で10月15日(木)から21日(水)まで、「個展」という形で展示しています(銀座・大阪ともに日曜日休館)。
よく行われている写真家の「個展」ですが、そもそもなぜ僕が今回、個展を開催しようと思ったのか、そんなお話をしたいと思います。
なぜ写真家は「個展」をひらくのか?
まず大前提として、個展の開催はお金がかかります。今回、展示会場としてお借りしている「キヤノンギャラリー」は事前に作品審査があり、これを通過すれば展示・写真展を開催することができるというレギュレーションがあります。審査をクリアすれば会場使用料がかからないというのが、こちらの会場の大きなメリットです。
ただ、写真のプリント作成や、展示できる形態にするまでの加工費などは自己負担になるので、ここにお金がかかります。ギャラリーはとても広いので、展示する写真のサイズもある程度大きくしなければいけませんし、点数も、サイズにもよりますが多く出す必要があります。
僕が今回制作した個展「つなぐ旅-その、日々へ-」はA2サイズ、合計35点を展示しています。1枚あたりの単価を明記することはご容赦いただければと思うのですが、ある程度の出費になっていることは、おそらくご想像いただけるのではないでしょうか。そこまでしてでも個展をする意味。極論を言ってしまえば、「自己満足」という単語が最も適切かもしれません。
僕が写真を撮る上で大切に思っていることは「伝わること」です。写真を通して、僕が感じたこと、伝えたい気持ちが、写真を見てくださった方に少しでもなにかしら伝わるかということが常に気にかかりながら、日々撮影をしています。実は、これができているかが最も分かるのが個展なのです。
個展は「ライブ」のようなもの
個展開催中は可能な限り、会場に在廊するようにしています。今回も、どうしても都合のつかない9月29日(火)を除いて銀座は毎日在廊し、大阪会場も毎日在廊できるように調整をしています。
個展は写真家にとって「ライブ」のようなもので、在廊することで、ご来場いただいた方からのリアクションをダイレクトに感じることができます。もちろんそれは、肯定的なものばかりではありませんが、そのひとつひとつが大切なものです。きちんと僕の思いとテーマが伝わって、ありがたい感想をいただくこともあれば、「これ、自分の失敗作みたいな写真だけどなんで飾ったの?」や「全然ダメ」といったご意見も、今日(9月25日)までにいただきました。
ご来場されるいろいろな方々
じっくり見てくださる方もいれば、2分くらいで出ていく方、会場に置いてあるDMや配布物だけを持っていく方、静かにご覧になられる方や、会場内でお話を大声でされる方、複数回きてくれる方、涙される方など、本当にいろいろな方がご来場されるのがギャラリーです。本音を言うと、なかには立ち振る舞いなどから「失礼な人だな」と思うこともありますが、それもまた個展を行う醍醐味かなと思っています。
在廊していると、展示作品35点の中にも多く質問をいただくもの、気に入ってくださるものなどがわかってきます。今回の個展は35点でひとつなので、この中にいくつかのテーマを込めています。その構成や、つながりが伝わっているかどうかも、いただく感想や作品を鑑賞していただいているときの足取りなどからもよくわかるのです。これがまさに個展は「ライブ」だと僕が感じているポイントです。
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Writer: 村上悠太(鉄道写真家)
1987年生まれでJRと同い年、鉄道発祥の地新橋生まれの鉄道写真家。車両はもちろん、鉄道に関わる様々な世界にレンズを向ける。元々乗り鉄なので、車でロケに出かけても時間ができれば車をおいてカメラといっしょに列車旅を楽しんでいる。日本鉄道写真作家協会会員、キヤノンEOS学園講師。