「自衛隊は便利屋にあらず」元陸自トップに聞く 災害派遣の流れと最近の課題
熊本地震から5年。いまでは毎年のように自衛隊が災害派遣で活動しています。しかし自衛隊が活動するためには法的な裏付けと出動までの定められたスキームがあります。元陸自トップに災害派遣の流れと課題について話を聞きました。
自衛隊の災害派遣は3種類
2021年4月14日は「熊本地震」の発災から5年の節目の年です。2016(平成28)年4月14日21時過ぎに熊本県東部を震源として起きた巨大地震は、その28時間後の4月16日1時過ぎにより大きな本震も発生し、最終的に死者273人、負傷者2809人という甚大な被害をもたらしました。
自衛隊は4月14日に最初の地震が起きた直後、初動対部隊「ファスト・フォース」を派遣するとともに、各種航空機を飛ばして情報収集を開始しています。一方で、4月14日21時26分に熊本県知事より、16日1時25分には大分県知事より、それぞれ陸上自衛他の地元部隊に対して人命救助に係る災害派遣要請が出されています。
自衛隊の災害派遣はどのように行われるのか、そのプロセスを元陸上幕僚長の火箱芳文(ひばこ よしふみ)さんに聞きました。
――火箱さんは第10師団長時代には能登半島地震(2007年3月)に、そして陸上幕僚長在任時には東日本大震災(2011年3月)と、過去さまざまな災害派遣に対処した経験をお持ちです。まず基本的なところで、自衛隊の「災害派遣」の法的根拠について教えてください。
自衛隊の災害派遣は「公共の秩序の維持」としての活動の一環であり、「災害により人命または財産に損害が及ぶ場合にこれらを保護する場合の自衛隊の応急的な救援活動」です。
自衛隊が災害派遣で動くにあたり根拠となる関係法令は「災害対策基本法」「大規模地震対策特別措置法」「原子力災害対策特別措置法」と、それを受けての「自衛隊法83条」です。そして派遣の種類には「災害派遣」「地震防災派遣」「原子力災害派遣」の3つある、これがポイントです。
ひとつ目の「災害派遣」は、自衛隊法第83条に基づくもので、都道府県知事などの要請を受け、防衛大臣またはその指定する者が部隊等を派遣する「要請による派遣」と要請を待ついとまがないことが認められる場合に部隊等を派遣する「自主派遣」があり、自然災害以外の急患輸送や行方不明者捜索、山林火災、渇水時の給水支援、そして医療支援なども含まれます。
対して、ふたつ目の「地震防災派遣」は自衛隊法第83条の2に基づくもので、これは内閣総理大臣からの要請を受け防衛大臣が部隊等を派遣するものになります。
そして3つ目の「原子力災害派遣」は、自衛隊法第83条の3に基づくもので、「地震防災派遣」と同じく内閣総理大臣の要請を受けて防衛大臣が部隊等を派遣するものです。
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