「自衛隊は便利屋にあらず」元陸自トップに聞く 災害派遣の流れと最近の課題

熊本地震から5年。いまでは毎年のように自衛隊が災害派遣で活動しています。しかし自衛隊が活動するためには法的な裏付けと出動までの定められたスキームがあります。元陸自トップに災害派遣の流れと課題について話を聞きました。

自衛隊が活動するための3原則とは

――では実際に自衛隊が災害で派遣されるには、どのような流れで出動に至るのでしょうか?

 まず市区町村長などが、「要請権者」と呼ばれる都道府県知事や海上保安庁長官(ほかには管区海上保安本部長や空港事務所長)などに対して「自衛隊へ派遣要請を出してほしい」という要求を出します。

 これを受け、今度は要請権者が「被要請権者」である防衛大臣またはその指定する者、すなわち陸上総隊司令官や方面総監、師団長などに派遣要請を行うことで、「要請があり、事態やむを得ないと認める場合」において防衛省・自衛隊は部隊を派遣することとなります。これが「要請に基づく派遣」であり、災害派遣の原則です。

 なお「事態やむを得ないと認める場合」の基準は「公共性」「緊急性」「非代替性」の3つの原則から判断することになっています。

 ただ、法律には要請を待ついとまがないと認められる場合も明記されています。そのときに用いられるのが「自主派遣」と呼ばれるものになります。これは、事態に照らし特に緊急を要し、「要請権者」からの連絡を待っていては時機を逸してしまうような場合、要請がなくても災害派遣を命ずることが可能な者が、例外的に部隊等を派遣できるものです。

 また、このほかに自衛隊の駐屯地や基地などの近くで火災その他の災害が起きた際、部隊長等の一存で派遣・活動できるものとして「近傍派遣」というのもあります。これは、簡単にいえば“近所付き合い”に類するものといえるでしょう。

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自衛隊の災害派遣について解説する火箱元陸上幕僚長(柘植優介撮影)。

――その「公共性」「緊急性」「非代替性」の3つの原則について詳しく教えてもらえますでしょうか?

「公共性」とは、公共の秩序を維持するという観点において妥当性があるかどうか、ということです。「緊急性」とは、状況的に差し迫った必要性があるかということ、そして「非代替性」とは自衛隊の部隊を派遣する以外、ほかに適切な手段はないのか、ということです。

 この3点は、すなわち「自衛隊でないと対処できない」のか否かという判断の基準になります。

 なお、「緊急性」と「非代替性」の2点については、人命に関わるような場合は直ちに出動すべきですが、緊急性はあっても他で替えが利くような場合には要請権者の要請を安易に受けることは慎まなければならないと思います。

 最近、豚コレラや鳥インフルエンザの殺処分などで自衛隊が便利屋の如く安易に派遣されているのは、元自衛官としてはあまり歓迎しません。

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