目的は「闇に紛れて飛ぶ」ほとんど“スパイ作戦専用”な軍用機があった! ただ、めちゃ遅い!

工作員の空輸は対日戦でも

 なぜ、機体を黒くしたのか。それは夜間、闇に紛れて飛ぶことが使命だったからです。こうして生まれた低速の特殊作戦機は、人知れず飛び続け、諜報戦で大活躍をはたしました。

 一説によると、「ライサンダー」が大戦中にドイツ占領下のヨーロッパへ送り込んだ工作員(スパイ)は101人、逆に無事「回収」した工作員は128人と言われています。そのなかには現代のCIA(アメリカ中央情報局)の前身であるOSS(戦略情報局)に所属するアメリカ人工作員も含まれていたとか。このような任務はフランスがドイツ占領から解放される1944年まで続いたそうです。

 なお、同様の任務は、日本軍と対峙していた東南アジアのビルマ戦線でも行われていたといいます。

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イギリス空軍のウェストランド「ライサンダー」(画像:IWM)。

 戦闘機や爆撃機のように派手な戦果を挙げていない「ライサンダー」ですが、まさしく「黒子」として極秘任務に就き続け、アメリカ・イギリスなどの連合軍が第2次世界大戦で勝利を収めるために大きな役割を果たしたといえるのかもしれません。

 ちなみに、戦後はその低空低速での高い安定性や滑走距離の短い離着陸性能などを買われて、農薬の空中散布機などとして重用されたそうです。

【了】

【これが全身真っ黒な機体か?】スパイ機「ライサンダー」を前後左右から見る

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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