もはや風前の灯? 日本の豪華客船建造、その火が消えるとき

ドイツ船が日本最後の豪華客船に?

 なぜ、三菱重工はこのような事態に追い込まれているのでしょうか。

 同社では理由として、公式に「プロトタイプの建造」という船主の要求に応えられなかったことを挙げています。つまり、船主が期待した新船型の開発に応じ切れなかったということですが、設計・製造を含めた三菱重工の“現場力”の劣化を指摘する声は、社内外から出ています。

 同社は今後、一種のリストラ策として、客船部門を「エンジニアリング事業」に組み込む方針です。しかし「エンジニアリング事業」の具体的な内容は明らかにされておらず、同業の造船会社も「受注リスクを負わず、製造など担う中堅の造船所や海外の造船所に協力するといったイメージかもしれないが、(三菱さんでさえ上手くいかなかった大きなリスクがある)客船建造に取り組む造船会社はあるのだろうか」と話します。

 いずれにしても、このドイツ船には3隻目の建造計画があったほか、日本のクルーズ会社の客船も代替建造期に差し掛かっています。日本で唯一、豪華客船に取り組んできた三菱重工について、客船建造の継続を期待する声がないわけではありません。

 当面は、今年12月に引き渡しが迫るアイーダ・クルーズの第1船と、来春に竣工予定の第2船を無事に建造することが課題です。しかしこのままでは、これらドイツ船が日本の造船業が手掛けた最後の豪華客船になる可能性もあります。

【了】

Writer: 若勢敏美(船旅事業研究家)

1949年生まれ。業界紙を経て1980年、海事プレス社へ入社。1989年、雑誌『CRUISE』創刊に参画し、翌年から編集長。2008年、海事プレス社の社長へ就任。2012年退任。この間、取材、プライベートを含め35隻の客船に乗船して延べ55カ国を訪問。地方自治体や業界団体主催の講演会などに多数出席。

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コメント

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3件のコメント

  1. どうでも良い話。
    今までのツケが回ってきただけだからね。

    遅かれ早かれ、日本のほとんどの企業が歩む道だよ。

  2. >三菱重工は船主から大幅な設計変更を求められ、やり直しなどで大混乱に陥りました

    船主から設計変更があるのに三菱が負担することに疑問を感じませんか?
    記事にするならば少し取材したらどうですか?

    「三菱にしか作れない」とか寝言書いてますが、
    本当のことを知ったら「三菱万歳」という気分になれませんよ
    まあ 本当のこと書いたら大変だとは思うけど・・・・

  3. 豪華客船瀬戸内パイレーツ1世号を造り乗りたい。伊予之鈍才です。
    三菱の豪華客船の事情は知りませんが。
    僕の船を造くるのに力を貸してほしい❗
    時代に即した。どこまでどうかは知りませんが瀬戸内海との約束を果たしたい❕
    この船が造られると大きな流れが出来る。これからの時代に必要な船未来を切り開く船。