日本造船界を覆う「三菱ショック」払拭なるか 業界3位が客船参入、新展開へ

三菱重工が2000億円以上の赤字を出すなど、大型クルーズ船の建造に大苦戦。これにより日本から大型客船建造のともしびが消えるのではないか、という危惧があるなか、業界3位の常石造船グループが新規参入を表明しました。海に囲まれた日本の船造り、いま、ひとつの転機を迎えているかもしれません。

ある「ショック」がいま、日本の造船を萎縮させている?

 先述の通り、三菱重工はドイツ・AIDAクルーズ社向け客船「AIDA Prima」(12万5000総トン、乗客定員3300人)の建造に大苦戦。納期は1年遅れ、赤字は2376億円にもなりました。そのため今後、同社がそうした大型客船の建造から撤退するのではないか――すなわち、海に四方を囲まれた日本から大型客船建造のともしびが消えるのではないか、という危惧があります。現在、日本で大型の客船を建造しているのは同社のみです。

 三菱重工がそのような事態に陥った理由として、「AIDA Prima」の建造が「巨大船の船上に遊園地を造る」ようなプロジェクトだったことが挙げられます。そうしたタイプの客船建造経験が少なかった日本の造船業にとってそれは、「想像を超えるような取り組みだった」としても過言ではないものでした。

 そう考えると今回、常石グループが客船事業へ参入することに対し、先行きを心配する人がいるかもしれません。しかし、同グループが想定する船型は高級志向の3万総トン級。6万総トン以下の客船、しかも高級タイプの客船では、船社にもよりますが、ショーなどの船上イベントも控えめで、客室に関してはホテルの発展型で対応できるともされています。つまり三菱重工が手がけた、船上に遊園地を造るような12万5000総トンの「AIDA Prima」とは状況が大きく異なるのです。

 常石グループの事業開発担当者は、「『あなたのとこは大丈夫ですか?』とよく聞かれます」と苦笑します。いま“三菱ショック”が日本の造船所を過剰に縮こまらせているのかもしません。

 客船事業は常石にとって、グループの神原汽船が昭和30年代に取り組んだこともある長年の悲願。常石が行ったこのたびの発表は、ついにそれを実現するという意味のほか、日本市場向けの新たな客船の登場も予感させるものです。これにより「日本の客船事業」自体、新しい展開に入っていく可能性があるでしょう。

【了】

Writer:

1949年生まれ。業界紙を経て1980年、海事プレス社へ入社。1989年、雑誌『CRUISE』創刊に参画し、翌年から編集長。2008年、海事プレス社の社長へ就任。2012年退任。この間、取材、プライベートを含め35隻の客船に乗船して延べ55カ国を訪問。地方自治体や業界団体主催の講演会などに多数出席。

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