「潜水艦の心臓、バラしてる!」海上自衛隊第2術科学校のぞいてみたら五感が刺激されまくりでした

神奈川県横須賀市にある海上自衛隊第2術科学校を見学したら、ガスタービン・エンジンの出力調整を体験させてもらえました。また、特殊な掃海艇用エンジンも間近で見学。海自オタとしては至福の空間でした。

エンジンって、こんなに種類あるの!?

 海上自衛隊では、入隊後も隊員が自身の職種の知識を深めるために、定期的に日本各地にある「術科学校」と呼ばれる専門機関に入校し、階級に応じてステップアップを図っています。そのような場所のひとつが神奈川県横須賀市にある海上自衛隊第2術科学校です。今回は、その取材レポート2回目です。

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海上自衛隊の潜水艦(画像:海上自衛隊)。

 学校の歴史に関するガイダンスを受けた後は、機関の実習場を案内してもらいました。まず案内されたのはディーゼル実習場。作業艇などに積まれている小さなエンジンの一部を透明にし、中の様子がよく見えるように改良された教育用の模型を使って、どのようにエンジンが動いているのかの説明を受けました。

 小さなエンジンとはいえ複雑な機構に、聞いているこちらも思わずメモを取ってしまいます。ここには実習中に使う工具が並べられたテーブルがあるのですが、よく見るとテーブルに工具のシルエットが書かれています。

 このシルエットに合わせて工具を置くことで、常にその有無や使用中か否かが明らかになるという寸法です。手順が1つ滞るだけでもトラブルに繋がりかねませんから、こうした工夫でミスやロスを防止しているのですね。この実習場は、最近リニューアルされたため、数ある実習場の中でも冷暖房完備という好環境。そのため、学生さんも気持ちよく勉強できそうです。

 次に案内されたのは年季の入った内燃機関実習場。ここには自衛艦が搭載する各種エンジンが設置されており、潜水艦のエンジン実習場ではちょうど学生さんの実習中でした。ディーゼル・エンジンのピストンを収める作業を覗かせてもらったのですが、直径が手のひらほどもある円筒形のピストンを、決まった角度で収めなくてはならないので、大きな機械に似合わず繊細な仕事が要求されます。

 また、その横には掃海艇用エンジンの実習場も。掃海艇は機雷除去などを担うため、磁気機雷に反応しないよう、アルミ合金製です。つい忘れがちになってしまうのですが、護衛艦は日本を守るための艦。その素材も危険な任務に対応したものになっているというのを、改めて感じることができました。

 最後に案内していただいたのはガスタービン・エンジンの実習場。ここに設置されているのは、ロールスロイス製の航空機エンジン「スぺイ」を転用したもので、現代の艦船ではスタンダードな動力源なのだそう。部屋のほとんどがエンジンで埋まった実習室では、特別にエンジンの出力調整を体験させてもらいました。

 さすがは巨大エンジン、イヤーマフで耳を守りながら筆談で意思の疎通をはかります。轟音の中、メーターを確認しながら細かく調整する作業は、小心者の私にはなかなかの重労働。機関科は職人気質でこざっぱりとした人が多いと聞きますが、職場環境を考えると納得です。貴重な体験をありがとうございました。

 次回は艦のトラブル解決のスペシャリスト、応急工作と電機についてお届けします。

【画像】これが潜水艦や掃海艇、護衛艦のエンジンです

Writer:

漫画家・デザイナー。夫のやこさん、娘のみーちゃんと暮らすのんきなオタク。海自にはまってからあれよあれよと人生が変わってしまった。著書「海自オタがうっかり『中の人』と結婚した件。(秀和システム)」「北海道民のオキテ(KADOKAWA中経出版)」各シリーズ発売中。

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コメント

1件のコメント

  1. 工具のシルエットとか型枠に収めるやり方は航空機整備では基本ですね