これぞ監督の特権!?『ルパン三世 カリオストロの城』にシトロエン登場したワケ「大人の事情」も関係
宮崎 駿さん初の長編監督作品である『ルパン三世 カリオストロの城』。劇場シリーズ第2作目である本映画の前半の見どころはルパン・クラリス・悪漢によるカーチェイスです。なぜクラリスのクルマはシトロエン「2CV」だったのでしょうか。
シトロエン「2CV」を長年愛用した宮崎監督
宮﨑さんは、もともと子供を保育園に送り迎えするため、マイカーの購入を決めたのですが、フランス映画『恋人たち』に登場するブリキ細工のような「2CV」に触発され、クルマ好きの先輩アニメーター、大塚康生さんに相談して中古車を探してもらいます。

最初に手に入れたのは375ccエンジン搭載の初期型(A型)でしたが、角目ヘッドライトの1970年代製造モデルを経て、最終生産型の602ccエンジンの「スペシャル」まで所有していました。
宮崎さんの「2CV」の熱愛ぶりはかなりのもので、彼がシリーズ中盤以降に演出として参加したテレビアニメ『ルパン三世』(1971年)に度々登場させています。そして、宮崎さんが手掛けたルパン三世シリーズの総決算とも言える『カリ城』で、ヒロインのクラリスが城から逃走する際に使用したクルマとして、最初の愛車であった初期型シトロエンを登場させたのです。
ただし、ひとつ付け加えると、監督のクルマだと制作スタッフが作画をする際、わからないところがあれば、実車ですぐ確認できるという利点があります。こうした制作上の大きなメリットも、劇中に「2CV」を登場させた一因であったのは間違いありません。
なお、劇中の「2CV」はクラリスの愛車というわけではなく、劇中のジョドーのセリフに「ご婚礼衣装の仮縫いでございまして、男どもが席を外した折でございました」というものがあることから、おそらくは城にやってきたお針子さんの愛車を奪ったものと思われます。治安の行き届いた城内に駐車ということで、持ち主はキーを挿しっぱなしにしていたのでしょう。
カーチェイスの後にクラリスの乗った「2CV」はバラバラになって湖に沈んでしまいますが、この走行中にパーツが外れる様は、実際に宮崎さんの最初の愛車に起こったことだとか。相当なポンコツだったことから、運転中にドアやキャンバストップが開いたり、パーツが脱落したりといったことが珍しくなかったそうで、おそらくはそのときのことを思い出しながらコンテを切ったもの思われます。
「手のかかる子ほど可愛い」との格言どおり、ぶつくさ文句言いながらコンテを切ったり原画を書いたりする宮崎監督を思い浮かべながら『ルパン三世 カリオストロの城』を見ると、また違った楽しみ方ができるかもしれません
Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)
「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に
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