徹底解説! 小田急の新型特急ロマンスカー70000形「GSE」(諸元あり)
小田急電鉄が導入する新型ロマンスカーの70000形「GSE」。ロマンスカーの伝統的な設備といえる前面展望室を設けた一方、ひとつの車体をふたつの台車で支える方式を採用し、連接台車の採用をやめました。訪日外国人観光客の増加に対応した設備も特徴です。
いよいよ引退「LSE」の代替新造車
2018年3月17日(土)、小田急電鉄の特急ロマンスカー専用車両である70000形電車「GSE」が、いよいよデビューします。
小田急のロマンスカーといえば、運転台越しではない本格的な「前面展望室」や、ふたつの車体の間にひとつの台車を設けた「連接台車」などが伝統的な設備として知られていますが、70000形は伝統の前面展望室を継承しつつ、連接台車を採用しませんでした。
開発の経緯
小田急は現在、ロマンスカー用の電車として、7000形「LSE」、30000形「EXE」「EXEα」、50000形「VSE」、60000形「MSE」の4形式を運用しています。7000形と50000形は前面展望室と連接台車を採用。これに対して30000形と60000形は前面展望室を設けず、台車も鉄道車両としては一般的な「1車体2台車」の構造になっています。
このうち、1980(昭和55)年から1984(昭和59)年にかけて44両(11両×4編成)が導入された「LSE」は、最も新しい編成でも30年以上が経過。すでに2編成が引退しており、残る2編成も老朽化が進んでいます。
そこで小田急は、7000形を置き換えるための新型車両の導入を計画。開発コンセプトは「箱根に続く時間(とき)を優雅に走るロマンスカー」とし、2018年3月17日(土)のダイヤ改正に向けて製造することになりました。
車両の愛称は、開発コンセプトの「優雅」と、ロマンスカー専用車両の伝統的な愛称「Super Express」を組み合わせた「Graceful Super Express」。略して「GSE」です。
伝統の「継承」、伝統からの「脱却」
70000形最大の特徴は、前面展望室の「継承」と連接台車からの「脱却」です。
編成
70000形は7両の固定編成を組んでいます。11両の固定編成を組む7000形に比べ4両少なくなっています。ただし、1両の長さは7000形より約4m長い20m(先頭車は約5m長い21.3m)。このため、編成の長さは7000形とほぼ同じ142.6mです。
編成両端の1号車と7号車には、前面展望室を設置。運転台は展望室の上部に設け、運転台越しではない本格的な前面展望を実現しています。
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Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)
鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。