機体がオバケみたいになる? 飛行機に「水銀式体温計」なぜ持ち込みNGなのか?

なぜ飛行機ではNGなのか やむを得ず持ちたいときには?

 先述のように、水銀はほかの金属と触れると、化学反応を起こしやすい物質です。アルミニウムの場合、水銀と触れると「アマルガム」と呼ばれる混合物(合金)を生成します。実験動画に見られたモップやおばけのようなものは、この「アマルガム」なのだそうです。

 そして飛行機の材料は、一部のモデルで例外はあるものの、「超々ジュラルミン」などのアルミニウム合金が多く用いられているのが一般的です。飛行機で使われるアルミニウムの多くは、腐食防止のため表面が膜で覆われているそうですが、もし水銀がその膜の隙間に入ってしまうと、先ほどの化学反応が発生する可能性も否めません。

 実験動画では最終的に、アルミ板が大きく削れてしまっていましたが、同様のことが機体に起これば、その強度が低下するどころではない恐れがあります。もちろん、気化した水銀が乗客の健康に影響を及ぼすリスクもあります。

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水銀式体温計のイメージ(画像:写真AC)。

 こうした理由から、旅客機への搭乗において水銀が使用された体温計は、万が一に備え危険物として扱われます。ただし国土交通省によると、2019年9月の時点では完全に持ち込みを禁じているわけではなく、保護ケースに納めたものであれば、預け手荷物として1点のみ持ち運びできるとのことです。

 水銀を用いた比較的一般的な機器としては、このほか気圧計や温度計といったものもありますが、旅客機においてこれらは一般の人の持ち運びが禁じられています。許可されているのは、気象庁、またはこれに順ずる機関の人に限ってのことで、その場合も水銀を浸透しない内張りの施された容器に入れるか、もしくは水銀を浸透しない袋へ納めたうえで容器に入れ、かつその容器が十分な強度を持つものに限り、1点だけ機内持ち込み可能としています。

【了】

【表】意外な盲点も!? 機内持ち込み制限がある荷物リスト

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