「のぞみ991号」乗車レポート 車両はデビュー前のN700S 東京から新大阪へ

一般の時刻表には載っていない「のぞみ991号」に乗車しました。車両は、まだデビューしていないN700S量産車。その運転開始を前に東京~新大阪間で走った「報道公開列車」です。どんな列車だったのでしょうか。

「のぞみ991号」 ホームの表示は「ご乗車いただけません」

「のぞみ991号」という一般の時刻表には載っていない列車が、2020年6月13日(土)、東海道新幹線の東京駅から新大阪駅まで運転されました。

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車内に表示された「のぞみ991号」の文字(2020年6月13日、恵 知仁撮影)。

 車両は、半月後の7月1日(水)にデビュー予定の新型新幹線「N700S」量産車。その営業運転開始を前に行われた、N700S量産車の本線走行と車内設備に関する報道公開列車です。

 午前9時50分ごろ、東京駅19番線に上がりました。N700Sの姿はまだありません。テレビカメラやスチルカメラを手にした人がゾロゾロ現れ、前に出る「こだま」を待っていた母子が「何かあるんですか?」と尋ねます。

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東京駅19番線に入線した「のぞみ991号」(2020年6月13日、恵 知仁撮影)。

 10時00分、N700S量産車(J3編成)の入線です。19番線の発車案内板には「回送 991 回送列車です。この列車にはご乗車いただけません。」と表示されています。

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「回送」と表示されている「のぞみ991号」(2020年6月13日、恵 知仁撮影)。

 一部のドアが開けられ、乗り込むと、新車特有の香りが鼻をくすぐりました。嫌が応にも、気持ちが高ぶります。

品川駅を出たところでN700S量産車の「見通し」を

 デビュー前のN700Sによる新大阪行き「のぞみ991号」は定刻10時12分、東京駅を発車しました。

 私は駅弁について「発車してから食べる派」なのですが、それはさておき、車内放送が入ります。「今日も 新幹線をご利用下さいまして ありがとうございます」ではなく、取材に関する内容です。

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「のぞみ991号」、車両側面の表示は「試運転」(2020年6月13日、恵 知仁撮影)。

 品川駅を出たころ、取材陣で協力して「見通し」を撮ります。人が写り込まない状態で撮影した客室全体の写真です。

 N700Sの量産車は、新型コロナウイルスの影響で車両お披露目の報道公開が中止になっていたため、この「のぞみ991号」が代わりの場になっていました。

 その客室をキッチリ撮影すべく、取材陣はいったんデッキに出て、順番に客室へ入り、シャッターを切っていきます。

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N700S量産車の普通車の見通し(2020年6月13日、恵 知仁撮影)。

 ちなみにこのとき、撮影者がいるデッキ側に最も近い座席1列は、回転させておきます。そのほうが座席、車内が綺麗に撮れるからです。

幽霊列車? 「のぞみ991号」

「のぞみ991号」は東海道を西へ、軽やかに走っていきます。しかし、スマホでJR東海の列車走行位置案内を見ても、その姿はありません。ちなみに、この「のぞみ991号」が走るのは、営業列車では臨時「のぞみ149号」博多行き、広島行き、「のぞみ317号」新大阪行きが使っているスジです。

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いま新富士~静岡間を走る「のぞみ991号」が載っていない(2020年6月13日、恵 知仁撮影)。

 取材での乗車は、なかなかに慌ただしいです。普通車からグリーン車に移動して同様に見通しを撮ったり、デッキや洗面台、トイレ、多目的室、喫煙ルームなどを撮影したり、進化したシートの座り心地を確かめてみたり、写真を撮る目的でパソコンを出して電源コードを座席のコンセントにつないでみたり。

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客室の側壁にあった小さな穴は……(2020年6月13日、恵 知仁撮影)。

 そうしたなか客室の壁に、小さなスピーカーでも入っていそうな穴を見つけました。車内でJR東海の担当者に確認すると、温度センサーが入っているとのこと。

 気がつくと、「のぞみ991号」は名古屋に近づいていました。停車駅が近づくと明るくなる荷棚の“実演”が始まるという案内が、車内で行われます。

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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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