復活の立野駅三段式スイッチバック 4年ぶり全線復旧をひかえた豊肥本線不通区間のいま
九州を横断する豊肥本線。その大きな特徴である立野駅の三段式スイッチバックを含む区間が、熊本地震などで甚大な被害を受け長期不通になっていました。4年ぶりの運転再開を間近にひかえた、その被災現場のいまを取材しました。
三段式スイッチバックなど「山岳路線」として知られる豊肥本線
JR九州は2020年7月16日(木)、2016年の熊本地震で不通となっていた豊肥本線の復旧区間を報道公開しました。豊肥本線は8月8日(土)に全線復旧する予定です。
熊本と大分を結ぶ豊肥本線は、1914(大正3)年に熊本~宮地間が宮地軽便線(1922年に宮地線と改称)として開通。1928(昭和3)年12月2日に、宮地駅と犬飼線の玉来駅とのあいだが開通し、豊肥本線という九州横断路線が誕生しました。
豊肥本線は、阿蘇山を含む九州山地を東西に貫くため、熊本と大分の平野部を除いた多くの区間は山岳路線です。外輪山を越える立野~赤水間には三段式のスイッチバックを設け、その勾配は33.3‰と、難所としても有名です。
山岳路線ということもあり、豊肥本線はこれまで幾度も豪雨などの災害に見舞われ、そのたびに路線は寸断。近年では2012年7月の九州北部豪雨で肥後大津~緒方間が被災して不通に。2013年8月、1年1か月ぶりに全線が復旧しましたが、2016年4月14日から16日の前震と本震の2回で最大震度7という熊本地震のために、肥後大津~阿蘇間が大きく被災し、不通になっていました。
熊本地震に加え豪雨で被害が拡大した豊肥本線
熊本地震で被害の大きかった区間は、瀬田~赤水間の外輪山を越える区間。そのうち最も被害が大きかったのは国道325号線の阿蘇大橋が架かっていた場所付近で、4月16日未明の本震で、西側の山が斜面長およそ700m、幅およそ200mにわたって崩れ、線路は土砂に埋まってしまいました。
さらに2か月後の6月20日、熊本・阿蘇を襲った豪雨により、数か所において山の斜面崩壊が発生。地震と水害という複合災害により、豊肥本線は大きな被害を受けることになってしまいました。
土砂崩れ2か所などがあった瀬田~立野間では
瀬田~立野間では、豪雨による大きな土砂崩れ2か所、橋梁のずれなどの被害を受けました。
31.250km地点では北側の山の斜面が崩壊し、盛り土部分は土砂で埋まりました。山の斜面は熊本県が修復。JR九州では線路脇の法面をコンクリートで固め(2019年9月)、盛り土を復旧し新たなバラストを敷くなどして軌道を敷設しました。
スイッチバック最初の転向部 立野駅では 駅舎の取り壊しも実施
スイッチバック最初の転向部となる立野駅(熊本県南阿蘇村)は、山から少し離れた場所にあり、土砂崩れなどの大きな被害はありませんでしたが、プラットホームが一部崩れる、上屋が傾くなどの被害を受けました。
このため立野駅では、120mあったプラットホームを91mに短縮して造り直し、上屋も新しいものに取り替えました。また待合室のあった駅舎は、2020年3月に取り壊されました。隣のホームにあった南阿蘇鉄道(旧高森線)の駅舎も2020年春に取り壊され、ここには南阿蘇村が橋上スタイルの立野駅を作る予定だそうです(南阿蘇鉄道の全線復旧は2023年の予定)。
立野駅の工事は、2018年9月から12月にかけて行われました。構内には資材置き場があり、ここから瀬田方面、赤水方面へバラストやレールなどを運ぶことができたそうです。
スイッチバック2つ目の転向部 分岐部が押し流された33.300km地点
スイッチバック2つ目の転向部となる33.300km地点は、先ほどの31.250km地点の上にあたります。付近は一部が地震で崩落しましたが、その2か月後の豪雨により、斜面長およそ350m、幅およそ120mにわたり斜面の土砂が崩壊。スイッチバックの最も奥側を埋め、また分岐部を押し流してしまいました。
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Writer: 皆越和也(フォトライター)
1961年熊本県人吉市生まれ。東京の編集プロダクション、出版社、PR代理店等で四半世紀ほど編集者、ライター、カメラマンなどの業務に携わり、2010年よりフリーのフォトライターに。2011年より拠点を熊本市へ移し国内外で活動中。