【空から撮った鉄道】世界遺産の中心部を走る近鉄電車 近くでは複雑な線路分岐も

大阪、京都、奈良、伊勢志摩、名古屋を結ぶ近鉄は、様々な表情を見せる路線があります。近鉄奈良駅周辺の線路は、世界遺産となった平城宮跡を横断し、大和西大寺駅では線路が複雑な分岐をしています。

この記事の目次

・線路配置の複雑さを空から表現したく
・平城宮跡を行く近鉄電車は見られなくなる?
・超望遠レンズの手持ち撮影は前面をクリアするのに神経を使う
・遺跡を走る電車は何ともいえない不思議な空間
【画像枚数】全14枚

線路配置の複雑さを空から表現したく

 近鉄の路線網は広範囲です。あちらこちらに魅力的な鉄道スポットがあり、近鉄を空撮する時はあまりに広範囲なので、じっくりと数カ所に絞り、どの辺を狙おうか考えて実施することにしています。

 今までは大阪、名古屋を中心に空撮してきましたが、近鉄で一番複雑ではないかと思う分岐駅、大和西大寺を狙おうと考えました。大和西大寺駅は京都線、奈良線、車両基地線の線路が複雑に絡み合っていて、ホームに佇んで眺めていても一日中飽きないほど、電車が幾多のポイントを渡って離合していきます。その複雑さを空から表現したいと思っていました。

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平城宮跡上空より大和西大寺駅を望む。画面手前が近鉄奈良方面、左手が橿原神宮前方面で、30000系「ビスタEX」が停車している西大寺検車区へと続く入出庫線もあり、構内配線は複雑なものとなっている(2018年9月7日、吉永陽一撮影)。

 また、大和西大寺駅のすぐ南側には古墳があり、東側の近鉄奈良駅方向には、世界遺産となっている平城宮跡の中心部を線路が貫いています。このように古代の歴史がすぐ線路脇にあるなど、そうそうありません。古都奈良らしい姿ともいえます。

平城宮跡を行く近鉄電車は見られなくなる?

 ちなみに、どうして平城宮跡に線路が横断しているのかというと、近鉄の前身である大阪軌道の線路が敷設された大正時代、平城宮跡一帯は田畑や荒地で、史跡すらなっていませんでした。その後の発掘調査で都の跡が出土して史跡となり、近年では朱雀門(すざくもん)も再現され、古の門と近鉄電車とが近接して見られるようになりました。最近の報道では、近鉄の線路を南下させて、平城宮跡を迂回する新ルート案が検討されているそうで、ひょっとしたら現在の姿は、そう遠くない将来見られなくなるかもしれません。

超望遠レンズの手持ち撮影は前面をクリアするのに神経を使う

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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