「イージス・システム搭載艦」は本当にベストな選択か? イージス・アショア代替問題
イージス・アショア代替案として閣議決定した「イージス・システム搭載艦」の建造ですが、本当にそれで問題は解決するのでしょうか。そもそもの目的と、ズレはじめた目論見。新型護衛艦の周辺に浮上している問題点を解説します。
「イージス・システム搭載艦」の建造が閣議決定
2020年12月18日(金)、日本政府は「新たなミサイル防衛システムの整備等及びスタンド・オフ防衛能力の強化について」と題する閣議決定を行い、その中で、配備計画が撤回された地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の代替案について、「イージス・システム搭載艦」を2隻建造し、それらを海上自衛隊が運用すると決定しました。
当初は海上リグ(石油リグのような、海上に設置される規模の大きい構造物)や民間商船に、イージス・アショア用に購入したイージス・システムを搭載する案も検討されていましたが、これらは防御性能の問題などが指摘され、結局、護衛艦をベースとする艦艇を建造する案が採用された形です。
これって本当に代替案なの? イージス・アショアとは大違いの性質とは
しかし、このイージス・システム搭載艦が本当にイージス・アショアの代わりを務められるかというと、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)はこれに懐疑的です。
そもそも、イージス・アショアを配備しようとしていた目的は、北朝鮮対応とそれによるイージス艦の負担軽減でした。要員の交代や定期的なメンテナンスが不要という地上配備の利点を活かし、イージス・アショアが24時間365日の警戒監視体制を実現することで、北朝鮮対応で日本海に常時展開を余儀なくされていた海上自衛隊やアメリカ海軍のイージス艦の代わりを務め、その負担を軽減しようというものです。
ところが、今回決定されたイージス・システム搭載艦ではこの目的を達成することができません。なぜなら、艦艇は定期的にドックに入って長期間のメンテナンスを受けなければならず、常続的な警戒監視は不可能なためです。そのため、その穴埋めは従来通りイージス艦が担うことになるでしょうから、この時点で一番大きな目的が達成できないことになります。
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