「イージス・システム搭載艦」は本当にベストな選択か? イージス・アショア代替問題

まずはイージス・システム搭載艦の目的をはっきりさせるべき

 そもそも、イージス・システム搭載艦に関する最大の問題は、その運用目的が不明確な点です。

 単なるイージス・アショアの代替とするのであれば、日本沿岸にとどまり、BMD(弾道ミサイル防衛)任務に専念するための最低限の機能だけを持たせれば十分なはずです。ところが、自民党の佐藤正久参議院議員がSNS上で公表した防衛省の資料によれば、実際には広範な対空戦や対潜戦能力など、BMD任務に必要なもの以上の装備の搭載まで検討されています。これは、いざというときに南西諸島方面に展開して中国の脅威に対応するためには必須の機能でも、北朝鮮対応では必ずしも必要とはされません。

 また、自民党内の考えはアメリカ海軍の最新鋭イージス艦と同等の装備を備える艦艇を建造しようというものですが、これもやはり中国への対応を念頭においたものと推察できます。

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日本政府がイージス・アショア用に検討していた、ロッキード・マーチンのSPY-7レーダー(画像:ロッキード・マーチン)

 イージス・アショアの配備目的は、第一に北朝鮮対応でした。ところが、イージス・システム搭載艦にはそれ以上の機能が期待されているように思われます。そこで、まずはイージス・システム搭載艦の目的と位置付けを明確にし、そして仮に中国への対応を念頭に置くのであれば、そのための戦略的な取り組みに関する指針を組み立て、その中でこの艦をどう活用するかを決定し、その機能を決定していくべきではないでしょうか。

【了】

【閲覧やや注意】先端恐怖症にはツライかも レイセオンのSPY-6レーダー

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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