日本のEEZでロシアが軍事演習 でも文句を付けたら負けなワケ 「お隣」の事例から解説
「ロシアが日本のEEZ(排他的経済水域)内で軍事演習」という文字面だけを眺めると、ずいぶんな横暴に思えるかもしれませんが、国際的にはどのように受け止められるのでしょうか。「お隣」の事例などから解説します。
日本海でロシアが軍事演習
ロシア政府は日本政府に対し、2021年7月7日(水)から9日(金)にかけて日本海でロシア軍が軍事演習を実施する旨を通告し、これを受けて海上保安庁は航行警報を発表しました。また防衛省によると、7月4日(日)に駆逐艦やフリゲートを含むロシア海軍の艦艇7隻が、太平洋から宮古海峡を抜けて日本海に向け北上したとのことで、今回の軍事演習と関係している可能性もあります。
今回の軍事演習について、一部のメディアや国会議員からこれを問題視する意見が出ています。というのも今回、演習を行うと通告された海域の一部に日本の「EEZ(排他的経済水域)」が含まれているのです。果たして、他国のEEZ内で軍事演習を行うことは国際法上、問題ないのでしょうか。
国際法上は問題ナシ
結論からいえば、他国のEEZ内で軍事演習を行っても通常であれば国際法上は全く問題ありません。
そもそも「EEZ」とは、領海などの幅を測る際の基準線である基線から200海里(約370km)の範囲で設定できる海域のことです。海洋に関するさまざまなルールについて定める「国連海洋法条約(UNCLOS)」によると、沿岸国の主権が及ぶ「領海」とは異なり、EEZにおいて沿岸国(この場合は日本)に認められるのは、魚介類や鉱物などを含む天然資源の探査、開発、保存および管理などに関する主権的権利と、人工島、施設および構築物の設置や利用、海洋環境の保護および保全、海洋の科学的調査などに関する管轄権に限られており、たとえば沿岸国の安全保障に関する権限などは設けられていません。
さらにEEZより内側で、領海のすぐ外側に広がる「接続水域(基線から24海里まで設定できる海域)」においてさえ、安全保障に関する沿岸国の権限はUNCLOSにおいては規定されていません。従って、他国のEEZ内で軍事演習などをすること自体は特段、問題とはならないのです。
ただし、だからといっていつでもどこでも自由に軍事演習を実施してしまえば、もしかするとそこで操業中の漁船に被害が生じてしまう可能性もあります。そこで、EEZ内で軍事演習などを実施する際には「沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払う」ことが求められています(UNCLOS 58条3項)。今回、ロシア側が事前に演習を実施する海域を通告したのも、この「妥当な配慮」に基づくものと考えられます。
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