宮崎カーフェリー新造船「フェリーたかちほ」見てきた! 快適さ段違い 「稼げる農業」の強い味方に
カーフェリー、宮崎の「稼げる農業」を支える!今後は競争力に課題も
宮崎カーフェリーは旅客輸送を担うと同時に、きゅうり、ピーマン、大根などの野菜、牛、豚、鶏など、宮崎県産の食材の出荷に重要な役割を果たしています。47都道府県中5位の農業出荷額をキープし、農業従事者は人口の2割弱。近年では海外への出荷額が数年で10倍の伸びを示すなど「稼げる農業」が看板でもある宮崎県にとって、多量輸送によってコストを押し下げる海上輸送・フェリーの存在は、重要な命綱でもあります。
また宮崎県からのトラックによる陸送の距離は近畿圏で約850km、関東へ約1400km。近年の「働き方改革」による拘束時間の上限設定の影響もあり、県のトラック協会も「配送の場所によっては、陸送では法令を遵守できない」とコメントしています。RORO船(貨物船の一種)の航路を持つ事業者も宮崎カーフェリーに出資するなど、ライバルからも期待を寄せられている状態です。こうして、陸上輸送を切り替える「モーダルシフト」によって、宮崎カーフェリーは物流の需要を堅実に担ってきました。
しかし、県北部の延岡、県南部の日南などでは、東九州道の開通・延伸により大分港や志布志港に発着する「フェリーさんふらわあ」との競争も起きています。2020年にはコロナ禍によって総旅客数が6割減少したほか、現在は世界的に原油高が進むなど、経営を取り巻く環境は厳しいものがあります。
宮崎カーフェリーは2018年に経営の安定と船体の更新を目指して国・県・地元財界が出資する現在の経営体制に移行したばかり。この航路は農作物の出荷時期には積載しきれないほどの状況が続くため、今後も宮崎の農業を支え続けるでしょう。
なお、「フェリーたかちほ」の2番船となる「フェリーろっこう」も3月に内海造船で進水式を終え、秋に就航する予定。こちらも現行の「こうべエキスプレス」を置き換えます。コロナ禍による影響もまだ残るなか、快適な新造船によって旅行客の呼び込みも期待されます。
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Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
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