地下鉄はそんなに弱くない 東京メトロ東西線“だけ”冠水し輸送障害 原因は台風14号を甘く見たことだった

資機材搬入口の止水蓋が、密閉されていなかった

 2つ目のミスは、漏水を止められなかったことです。道路の下、つまり地下は大きく2層になっていて、すぐ下に下水管、さらにその下に東西線の折返し施設の拡張工事現場があります。下水管の漏水は、下水管のある層で食い止めら得るべきでした。

 この2層は分離しているのですが、あいだに資機材搬出入のため2000mm×3000mmの開口部を設けていました。この開口部は、雨水などが下層の工事現場に流れ込むことを想定して止水蓋になっています。固定金具でゴム板を挟みこんで浸水を防いでいるのですが、固定金具が未装着で、漏水が多くなるにつれて止水蓋がずれて、下層の工事現場に直接流れ込みました。

 工事現場のすぐ隣では、東西線が運行を続けていましたが、駅構内の天井から水が垂れることなく線路が冠水したのは、雨水の進入が開口部から直接工事現場に流れ落ちたためです。本線と工事現場である留置線の間には低い仕切りがあるものの、雨水は工事現場側の排水口などから本線に流れ込みました。

 東京メトロは次のように説明します。

「作業中、開口部は開放し、作業が終わると閉じる。荒天が予想される場合に固定金具で密閉する。台風14号は19日(輸送障害の翌日)に東京へ影響を与えることになっていたので、この日の点検後に固定金具を使う予定だった」

 資材搬出入口から進入した雨水は、飯田橋駅を通過し、神楽坂駅方面へと流れ落ち、ポンプ室がある区間最深部を中心に約430mを浸水させました。駅間の固定ポンプのほか、22台の仮設ポンプで地上にくみ上げる必要がありました。

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9月18日の運行案内。高田馬場~日本橋間で運休となった(画像:東京メトロ)。

「荒天が想定される場合、トンネル内への雨水流入の可能性がある箇所について、点検作業を徹底すべきだった」(前同)

 これが約8時間にわたって13万9000人の足に影響を与えた輸送障害の真相でした。前例のない猛烈な台風という警鐘は、東西線に限っては響きませんでした。折しも9月23日から25日までの3連休、別の台風が日本へ近づいています。

【了】

【写真/図】浸水した線路と原因

Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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