飛行機のトイレで出たモノはどこへ…実は200km/h超で配管を爆走! でもナゼ? 納得の仕組み

なぜそこまで“モノ”を高速疾走させるのか

 ジェット旅客機が飛ぶ高度1万メートルは、地上(高度0m)の気圧の5分の1の環境です。そのなかで機内は、旅客が生命活動を維持できるよう、人為的に気圧をあげ、地上環境に近づけられています。ただ、映画やドキュメンタリーなどで飛行機の壁に穴が空き、人や荷物が吸い出されてしまうシーンがあるように、その高い気圧を一気に下げると非常に強い空気の流れが発生します。飛行機のトイレは安全性を保ちながら、この原理を応用しているといえるでしょう。

 A380の場合、全長は73mですが、巨大な客室を持つにも関わらず最前方にも最後方にも化粧室があります。それゆえ、配管も相当な長さになります。しかし、時速130マイルの速度にもなる強い吸引力を用いれば、途中で詰まることなくタンクに“モノ”を納めることが可能です。

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ボーイング787の化粧室。この飛行機ではTOTO「ウォシュレット」がついていて、便座横にスイッチがある(乗りものニュース編集部撮影)。

 この形式のトイレは大きな音が出てしまう反面流す力も安定し、吸引力の強いぶん使う水が少量で済むために機体の軽量化につながるほか、臭気まで吸い取ってくれる換気効果もあり、旅客の快適性向上にもつながっています。ちなみに、地上など気圧差が十分でない場所では、バキュームブロワーという装置を使って、タンク内を低い気圧にして対応しています。

 なお、従来の旅客機では、このバキューム式のものではなく、多量の洗浄水を積み、流したあとの水を浄化し再利用する「循環式」のものが主流でしたが、先述のメリットから、新鋭機はバキューム式が一般的になっています。

 ちなみに、JAL(日本航空)の整備士によると、バキューム式のトイレでは、配管が詰まらないよう、定期的に配管を入念にメンテナンスするそう。作業のさいには「非常に強力な溶剤」を用いて、2時間から3時間かけて漬け込みと循環を実施し、ピカピカの状態にしているということです。

【了】

【図解】さっと理解「バキューム」トイレの仕組み

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