退役F-15のエンジン「そのまま使える…!」 インドネシアへ大型の装備品輸出 今のままでは無理な理由

両国にぴったりじゃないか!

 インドネシア空軍が1989年から90年にかけて導入したF-16のブロック15仕様機は、F-15J/DJのPre-MSIP機に搭載されているF100-IHI-100ターボファン・エンジンの原型であるアメリカのプラット・アンド・ホイットニーが開発したF100ターボファン・エンジンを搭載しています。このため、F100-IHI-100ターボファン・エンジンはそのまま流用可能です。

 このブロック15仕様機とは別に、インドネシア空軍は2011年にアメリカから近代化改修を施した中古のF-16を30機導入しており、ブロック25と呼ばれています。これらも、F100ターボファン・エンジンを搭載しており、F100-IHI-100ターボファン・エンジンを流用することができます。

 ただし、いまのままでは輸出はできず、越えなければならないハードルがいくつかあります。

 日本とインドネシアの両政府は2021年3月に、防衛装備品・技術移転協定の締結に合意しました。しかし現在の防衛装備移転三原則では、インドネシア以外の協定締結国に対しても、救難、輸送、警戒、監視、掃海の5類型の防衛装備品に輸出を限定しており、戦闘機のエンジンは対象外となっています。このため輸出にあたっては防衛装備移転三原則の改定が必要になります。

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インドネシア空軍のF-16(画像:インドネシア空軍)。

 また、F100-IHI-100ターボファン・エンジンは日本企業のIHIがライセンス生産していますが、前に述べた通り、原型のF100ターボファン・エンジンはアメリカ企業のプラット・アンド・ホイットニーによって開発されています。このため輸出にあたっては同社とアメリカ政府の許可を得る必要もあります。

 F100-IHI-100ターボファン・エンジンの売却は、インドネシアにとっては主力戦闘機であるF-16のエンジンを安価に調達でき、日本にとっても、いくばくかの金銭を得られるだけでなく、同国とのさらなる関係強化も見込めます。日本と同じ海洋国家であり、ともに中国の力による現状の変更に対して厳しい姿勢を示しているインドネシア、今回のハードルを乗り越え防衛協力の進展につなげられるでしょうか。

【了】

【なぜ!?】輸出にアメリカの許可が必要なF-15エンジン(写真)

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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