さよなら「ロイヤルウイング」現役最古だったレストラン船 横浜から姿消す 今後の運命は?

行先は韓国か? 曳航で日本の外へ

 運営会社が目まぐるしく変わった一方、竣工時に搭載された巡行速力18ノット(約33.34km/h)という快速のメインエンジンや、大きい舵輪が付いた操舵スタンド、そして船の前後進やエンジンの回転数などをブリッジから機関室へ指示するエンジンテレグラフなどは一貫して使われ続け、63年間の運航を支えました。機関室・操舵室見学プランも用意されていたことから、レトロな機器を間近で見た船舶ファンの人も多いのではないでしょうか。

「くれない丸」時代から多くの人に愛されていた「ロイヤルウイング」でしたが、船体の老朽化や運航に必要な部品の入手などが難しくなり、2023年5月14日のファイナルクルーズをもって運航を終了。その役割は2025年に計画されている代替新造船へと引き継がれる予定です。

 奇しくも関西汽船の航路を引き継いだ「フェリーさんふらわあ」が2023年1月に「くれない」の名を継いで、大阪~別府航路に日本初のLNG(液化天然ガス)燃料フェリー「さんふらわあ くれない」(1万7114総トン)を就航させています。

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タグボートに引かれて横浜港を後にする「ロイヤルウイング」(深水千翔撮影)。

 かつては響かせていたメインエンジンの振動音も消え、自走することがなくなった「ロイヤルウイング」は、タグボート「ひろかい」に曳航されて、ゆっくりと回頭しながら大さん橋を離れ、慣れ親しんだ横浜港に別れを告げる汽笛を鳴らしました。

 出港直前には、同じく横浜港で営業を続けるレストラン船「マリーンルージュ」も駆けつけています。同船は、同じ場所でともに働き続けた“船仲間”との別れを惜しむかのごとく、しばらく速度を落として「ロイヤルウイング」の姿を見守っていました。

 何度もくぐった横浜ベイブリッジを背に、「ロイヤルウイング」は最終航海へと向けて東京湾から太平洋へと出ていった後、当初「くれない丸」の名で客船として就航していた瀬戸内海に大阪湾から入ります。瀬戸内海では後輩の「さんふらわあ くれない」と最初で最後のすれ違いが行われるかもしれません。その後、関門海峡から日本海に出た同船は壱岐島(長崎県)の郷ノ浦港を経て、そのまま海外へ向かうと見られます。船体の状態から国内での再利用は難しいと考えられ、韓国の釜山などで解体される可能性があります

【了】

【これが本当に最後です】ドナドナされて横浜港から出る「ロイヤルウイング」(写真)

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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